具にタケノコとニンジンを加えたのも、噛んだときにリズム感を加えるため。麺とからんだときの調和を考えての工夫だ。
「特製花椒香油も、熱した油をかけて生まれるスパイシーな香りを感じてもらうため、油でしっかりと唐辛子を炒めています」(同)
■SNSで画数が話題に
ビャンビャン麺への熱い視線は、辞書にも及んでいる。1月に発行された『三省堂国語辞典 第八版』には、ビャンビャン麺が新語として加わった。
「新規項目を収録するときは、広く使われていることが観察される、今後もしばらくは使い続けられるであろうと判断される、という2点に基づきます」(三省堂国語辞典編集部)
前者はコンビニなどでの商品化、街の飲食店のメニューとしてしばしば見かけること、SNSで漢字の画数の多さがよく話題に上ったことなどが、根拠になった。後者は、類似の事例から推察したという。
「たとえば、第七版で加わった刀削(とうしょう)麺は、00年代後半に提供する店が増えた感触がありました。その後、ブームは沈静化しましたが、今も街を歩けばメニューを目にしますし、時代遅れの感はありません。そもそも中国の伝統料理です。同様に考えれば、ビャンビャン麺も定着する可能性があり、どういう料理だろうと調べる読者を想定して項目を立てました」(同編集部)
ビャンビャン麺の火付け役で東京に4店舗を構える「西安麺荘 秦唐記」オーナーでソンメー商事代表取締役の小川克実さんは、ビャンビャン麺という言葉が国語辞典に収録されたと知って、とてもうれしかったそうだ。食が国を超え、人々を結びつける。味わうときは、そんな豊かさも感じてほしい。(ライター・角田奈穂子)
※AERA 2022年4月4日号より抜粋