琉球大学教育学部教授の照屋俊明さん(理学博士)が解説する。
「シークヮーサーのノビレチン含有量は温州ミカンの約10倍です。夜中にトイレに2回、3回と起きると昼間の生活の質が低下してしまいますが、ノビレチンを摂取することで夜中に起きる回数が減り、生活の質が改善されることが臨床試験で確認されています。また、高齢者の記憶能力の改善が同様に認められました。このほか、体内時計の調節や筋肉の質の改善などの効果も期待されるなど、高齢者にはうってつけの食材なのです」
地域で住民が支え合う仕組みも、高齢者の命を守っている。合同会社「わーけーまちや」(私たちの店)代表で、饒波(ぬうは)地区の区長を務める山城初子さんがこう話す。
「うちの区では毎月、公民館で模合(もあい、沖縄の風習で頼母子講の一種)の集まりをしています。お互いの安否を確かめるのが目的ですが、ゆんたく(おしゃべり)会やゲートボールが楽しみにつながります。区内に一人暮らしの高齢者がいたときは、朝起きたら玄関の戸を少し開けておいてもらうようにしていた。それが『元気だよ』という目印。閉まっていたら、私たちや隣近所の人が様子を見に行く。地域で見守る態勢を取っているんです」
ここまで紹介してきた村の暮らしは、前出のブルーゾーンに共通する長寿の要因をしっかりと満たしていることがわかる。これらに加え、恵まれた自然環境の効果に着目するのは、静岡県立大学大学院特任教授の山田静雄さん(薬学博士)だ。
「村の人々が豊かな自然の中で五感を使ってきたことが長寿につながっていると思います。自然の恵みを食し、美しい景色を見て、せせらぎの音、鳥の鳴き声を聞いてきた。澄んだ空気や土に触れ、味覚・視覚・聴覚・嗅覚・触覚が育まれてきたはずです。五感が脳幹にある内分泌系、自律神経系、免疫系を刺激することで免疫力や自然治癒力がアップするなど健康効果があると考えられます」
大宜味村では104歳のおばあちゃんがハエたたきでハブをしとめ、話題になったこともある。高齢者が元気なのは若者や子どもたちにとって心強い。(本誌・亀井洋志)
※週刊朝日 2022年4月22日号