「ママは付き添って病院にいくけど、戻ってくるから留守番していてね」と言ってきかせると、しっかりとよい子で待っていてくれました。
そんなふうに物おじしないひじきちゃんでしたが、風だけは怖かったみたい。
すごく風がびゅうびゅうと吹いたある日、仕事から戻ってきたら、ひじきちゃんが着ていたお洋服がありません。探したら、押し入れの布団の間にちょこんと挟まっていました。風の音が怖くて、布団の中にじっと隠れていたのでしょう。
ああ、福島にいる時も一匹でいろんなことに立ち向かったり、耐えたりしていたんだなと思うと、切なさがこみあげました。同時に、ずっと元気でいてほしいと思ったものです。
けれどそんな私の願いとは裏腹に、ひじきちゃんはだんだんと、体が衰えていきました。
家に来た時は5キログラムくらいありました。病院から終末までの治療プランももらっていましたが、家にきて2カ月くらいは病院に行くこともなく順調でした。でもよだれをたらし、湿疹ができたりしたのでちょこちょこ通院をはじめ、点滴も受けるようになりました。
もともと食が細い子でしたけど、食べる量が減り、点滴の間隔が狭まっていきました。2~3カ月に1回が1カ月に1回、数週間に1、2回となり……。2018年の夏以降にがくっと調子を崩し、体重も2キログラム台になってからは頻繁に通院し、手厚いケアを受けました。
それでもどんどん衰えていき。なのに私が仕事から帰ると玄関に座って待っているので、「寝てなさいね」と声をかけると、翌日から寝ているようになりました。
死に場所を探すように、ふらふらと部屋のいろいろなところを探そうとするので、「だいじょうぶよ、一緒にいましょう」と声をかけました。
だからひじきちゃんは、最期の時を私のふとんで迎えました。
家に来て4年めの2018年、10月21日、私が寝ている間に、眠るように旅立ちました。娘は、「お母さんを心配させまいとして、隠れない代わりにその瞬間を見せなかったんだよ」と言ってくれました。病院からは(原因は)「老化です」と言われました。