先代のマギーもまぁ坊も、亡き後に病院できれいにしてもらっていたので、ひじきちゃんも病院できれいに拭いてもらいました。
そして、家に連れて帰り、凍ったペットボトルの水を体に当てて、それから2晩、一緒に寝て、ずっと話しかけました。
「今まで、よくがんばったねえ」
「家に来てくれてありがとうね」
すると夜中に、洋服を着ていないひじきちゃんが現れて、ぐるぐると布団のまわりを周りました。思わず「あなた死んだんじゃないの?」と声をかけましたが、あれは夢か幻か……。
早いもので、あのお別れから3年半が経ちました。
でも、娘とは、今でも生きているようにひじきちゃんの話をするんです。作家や伝統工芸士の方に描いてもらったひじきちゃんの絵もあります。
ひじきちゃんが残してくれた温かなものが、部屋にも心にもいっぱい。ボロボロになりながらも、諦めず、歩いて歩いて……その道が東京の我が家へと続いていたんですね。
ひじきちゃんが保護されていた三春シェルターは2015年に閉鎖し、今は福島県動物愛護センター「ハピまるふくしま」になったと、福島県の方にお聞きしました。三春シェルターのスタッフだった方が、ひじきちゃんが我が家に来ることが決まった後に、動物病院にこんなはがきをくださったと、先生が教えてくださいました。
<ひじきちゃんへ。やっと家猫としての生活に戻れたネ。誰も住んでいない町で頑張って生きてきたんだから、幸せにならなくては……飼い主さんにうんと甘えて可愛がってもらってね>
ひじきちゃんは、その言葉通りうんと甘えてくれましたよ。そして、私たちをこの上なく、幸せにしてくれました。
ひじきちゃんを中心に生活するうちに母子の関係も良好になり、娘の薬も減り、病気もよくなっていったんです。ひじきちゃんが原動力となり、私は今も仕事を続けています。ささやかながら、動物愛護センターなどに寄付を続けているんです。自分の命があることで、ひじきちゃんのようにひとつでも命が救われればと思っています。
今日も娘とひじきちゃんの話をしましょう。部屋に差す陽光を追いかけるのが好きだったひじきちゃん。今日もいい天気だよ。
(水野マルコ)
【猫と飼い主さん募集】
「猫をたずねて三千里」は猫好きの読者とともに作り上げる連載です。編集部と一緒にあなたの飼い猫のストーリーを紡ぎませんか? 2匹の猫のお母さんでもある、ペット取材歴25年の水野マルコ記者が飼い主さんから話を聞いて、飼い主さんの目線で、猫との出会いから今までの物語をつづります。虹の橋を渡った子のお話も大歓迎です。ぜひ、あなたと猫の物語を教えてください。記事中、飼い主さんの名前は仮名でもOKです。飼い猫の簡単な紹介、お住まいの地域(都道府県)とともにこちらにご連絡ください。nekosanzenri@asahi.com