私はその時、「心をかける、言葉をかける、手塩にかける」その三つの「かける」をひじきちゃんとの生活で実践しようと誓いました。
ひじきちゃんは、私が病院に迎えに行くと、おとなしく抱かれました。正直、ボロボロな感じで、フケもたくさん。抱いたら私の服が真っ白になってしまい、看護師の方が「粉雪みたい」とおっしゃったほど。できる限り治療をしたということでしたが、口内炎がひどく、よだれも出ていました。甲状腺の数値も悪いと聞きました。
三春シェルターに保護されるまで1年半くらいあったようなので、苦労したのでしょうね。福島の冬は寒いし、がれきの上を歩くのもさぞかしつらかったことでしょう。
心も傷ついていたからでしょうか。自分の毛をむしる癖もあり、洋服を4枚くらいシェルターから持参していました。おしゃれとしてでなく、よだれやフケや脱毛を防ぐために、ひじきちゃんはお洋服をふだんから着ていて、それがトレードマークでした。
我が家に来た初日は、キャリーバッグにじっと隠れていました。やはり震災経験があるせいか、慎重な様子がみてとれました。
来た翌日、私は仕事が休みだったのですが、ひじきちゃんは前日とうってかわり、急に若返ったみたいに、すごい勢いで私の後を追いました(笑)。娘は、「『僕のママを見つけた!』と思ってるんじゃない?」と言いましたが、前の飼い主さんと間違えたのかもしれません。それほどまでに“べったり”になったのです……。
あまりにべったりなので、仕事に行けるか心配になり、「お仕事の間、お留守番をしてね」と言ってきかせました。
私は当時、ダブルワークをしていて、午前3時半に起きて4時に家を出て、高齢者施設で食事作りをしていました。家を出る時、ひじきちゃんは玄関まで送り出してくれました。昼前に帰ってきて、ひじきちゃんにごはんをあげて、午後から二つ目の職場に出かける時も見送ってくれて、帰ると出迎えて。夜は一緒に寝る、という毎日が始まりました。