■内部チェックや牽制機能がなく理事長の暴走を容易に許した
21年12月、「学校法人ガバナンス改革会議」は不祥事の再発防止を念頭に、新しいガバナンスを示した最終報告書をまとめた。そのなかにこんなフレーズがある。「評議員会を最高監督、議決機関と定める」「現役の理事、監事及び職員との兼任は認めず、その選任も理事又は理事会において行うことを認めない」。
わかりやすくいえば、(1)大学の最高議決機関をこれまでの理事会から評議員会に変更して、評議員を全員、学外者とする。理事長、学長、教員は評議員になれない。(2)評議員会の議決権は予算や事業計画のほか理事らの選任にも及ぶこととなり、学部設置、施設建設など重大なことが学外者によって決定される。
なぜ、こんな政策が打ち出されたか。
いま、大学では理事会が強い権力をもっている。しかし、そのトップである理事長が長く居すわって教育、研究を停滞させたり、不正を行って私腹を肥やしたりしても、それを諫めることができないし、解任するなどは不可能だからだ。
大学ガバナンスに取り組んできた、元国会議員の塩崎恭久氏はこう指摘する。
「大学は、公益法人として固定資産税、法人税等多額の免税措置を受けています。ところが、何ら有効な内部チェックや牽制機能が働かないまま理事長の暴走を容易に許してしまった。現行法制下のガバナンスの仕組みこそが問題で、それを定めている私立学校法などを速やかに抜本改正することが不可欠だ、という事です」(「デイリー新潮」21年12月24日)。
そこで、評議員会を大学の最高決議機関として、大学運営のあらゆる面をチェックできる機能をもつようにした。また、不祥事を起こした理事や理事長を解任する権限をもっている。いうなれば第2、第3の日大・田中理事長を出さないための政策である。
■大学の自治が保障されたからこそ、学問の観点から大事だと考える
ところが、この最終報告書について、私立大学の多くが反発した。
日本私立大学連盟はこう批判する。