近年の不正入試、理事長の脱税で、大学への信頼は大きく傷ついた。大学運営を改善するため、国は厳しい「ガバナンス」を求めたが、賛否が渦巻いている。『大学ランキング2023』(朝日新聞出版)から紹介する。
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2018年、東京医科大の入試選考において女子受験生の得点を低く操作し、不合格にしていたことが発覚した。
「女性は結婚、出産で医師の仕事を離れることがあるから」というような理由で、女子の入学者数を制限したとされている。これに対し、「重大な女性差別だ」という厳しい批判が起こった。
21年、日本大理事長の田中英壽氏が所得税法違反の容疑で逮捕され、のちに起訴された。日大板橋病院の建て替えをめぐり、計約1億2千万円のリベート収入を申告しなかった脱税容疑が問われたものだ。のちに、田中氏は東京地裁で懲役1年執行猶予3年罰金1300万円の判決を受けた。日本大は田中氏の理事職を解任した。新理事長の加藤直人氏は「日本大学は田中前理事長と永久に決別し、その影響力を排除します」と宣言した。
東京医科大、日本大いずれの事件も連日報道が続き、大学そのものに対する風あたりも強まった。大学は「社会の常識とかけ離れている」と言われてしまう。
■大学への信頼を取り戻すため大学運営のあり方を見直す
なかでも日本大は、大学トップが引き起こした事件であり、自らが不祥事をただして究明する、つまり、大学に自浄作用を求めるのは難しいのではないか、というさめた見方もあった。
国は看過できなかった。大学への信頼を取り戻すため、大学運営のあり方を根本的に見直そうとする。「大学トップの暴走を止めるにはどうしたらいいか」というテーマまで議論された。
21年7月、文部科学省は有識者による「学校法人ガバナンス改革会議」を設置した。ガバナンスとは、「統治」と訳されている。この言葉の語源は「舵を取る」という意味のラテン語である。