
オフィスへの出社や各地への出張。そんな日常がコロナ禍で変化した。在宅勤務はメリットも大きいが、仕事は日常に侵食し、早朝や深夜まで追いかけてくる。“エンドレスワーク”を避けるにはどうしたらいい?AERA2022年5月16日号の記事を紹介する。
* * *
午前8時。不動産関連の広告営業職として働く都内の女性(42)は、小学生の娘を学校まで送る。学校や友だちのことなど他愛(たわい)ない話をしながら、娘の歩幅に合わせてのんびり歩く。
5分というわずかな時間だが、心が穏やかになる朝の習慣だ。女性は犬の散歩や朝食の後片付けなど家事をこなし、午前9時、リビングで仕事を始める。
新型コロナウイルスの感染拡大を機に、テレワーク中心の毎日になって約2年。通勤や営業先への移動時間がなくなった分、家族と過ごしたり家事の時間を捻出したりできているのはありがたい。でも──。
この日は、営業先とのアポイントが8件、社内の打ち合わせが2件。夕方までびっしりだ。
「移動時間がないことと、オンラインだと雑談がなくなる傾向にあるので、ミーティングの時間が短くなり、その結果、アポイント数が増えました。コロナ禍以前は、日本全国どこでも出張に出かけていたこともあり、アポと社内打ち合わせを合わせて多くても1日4件ほどだったのに」
■アポはどんどん入る
アポイント数が増えると、おのずと、それに伴う資料作成や報告作業などが増える。娘が学童保育から帰宅する午後6時すぎになっても、仕事が終わらなくなった。夕飯を食べる娘の横でパソコンのキーをたたき、お風呂は1人で入らせている。娘が寝た後や早朝にも延々と仕事をする日々だ。
最近、娘が塾の宿題の作文に「ひとりでお風呂に入るのはさみしい」と書いていたことを知り、心が痛んだ。女性は言う。
「自分がしっかりしないといけないですね。どんどんアポは入ってくるし、無理をすれば対応できてしまう。けれど、今期やること、やらないことを明確にして、最適な仕事量を見つけなければいけないと感じています」