日本単独野営協会はソロキャンパーの集まりで、軍幕はその1ジャンルだ。同協会が標榜するのは「環境を傷つけないキャンプを」ということ。キャンプ大会の際も、個人でキャンプするときも、周辺のゴミ拾いなどを励行している。
お気に入りビンテージ
こだわりの用具を集め、スタイリッシュなキャンプを楽しむひとたちもいる。ビンテージの車やテント、アウトドアグッズをコーディネートして楽しむビンテージキャンプというジャンルがある。
埼玉県在住の黒崎義信さん(46)の愛車は、1967年式のワーゲンバスだ。内部を改装してキャンパー仕様にしてある。テイストを合わせてレトロなデザインに作ってもらったカーサイドタープを張り、同年代のテーブルやランプを並べると、オシャレな移動カフェに見える。
「間違えてコーヒーを買いに来た人もいましたよ」
と、妻の知子さん(47)は笑う。もともとボーイスカウトだった義信さんと、ビンテージものが好きだった知子さんの趣味が合流してこのスタイルが始まったという。
「同じ趣味の仲間や家族たちと車を並べて、いつもこうやってビンテージ村を作るんです。キャンプ場にいても私たちのまわりだけ、タイムスリップしたみたいになります」
それぞれにこだわりのキャンプスタイルがある。芳野忠輔さん(38)、知子さん(38)夫妻は1980年ごろに作られたフランス製のテントを愛用している。食器やランプなども同年代の北欧製で揃えた。
67年式ワーゲンバスキャンピングカーに乗っている杉山亮一さん(46)はキャンプ用品の製造年にこだわっている。車と同じ67年、自分が生まれた75年と、それぞれゆかりのある年式のコールマンのランタン(バースデーランタン)をコレクションしているのだ。
アウトドアをビンテージアイテムでコーディネートした写真をインスタグラムに投稿するうち、同じ趣味を持つ仲間も増えたという。
「生まれる前や幼かったころの文化を、むしろ新鮮に感じるんです。現代の製品にはないセンスと、アウトドアの楽しみが同時に味わえるところが魅力だと思います」(黒崎知子さん)
都会の喧騒を離れ、自然に触れるだけでなく、キャンプにはコアな楽しみ方もある。自分だけの趣味の世界を掘り進んではどうだろうか。(ライター・浅野裕見子)
※AERA 2022年5月23日号