コロナ禍が続く中、アウトドアの人気も続いている。3密を避けることができるレジャーとしてキャンプ人気が広がるいっぽうで、達人たちのコアな世界がある。AERA2022年5月23日号から。
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これまでに何度ブームがきたことだろう。アウトドアがまたもや人気だ。新型コロナウイルスの感染拡大により、国内のレジャーの様相が一変した2020年、年間のオートキャンプ参加人口は610万人(日本オートキャンプ協会「オートキャンプ白書2021」から)にのぼった。
「3密」を避けるレジャーとして注目されたことで多くの初心者が流入し、裾野が大きく広がった。いっぽうでコアな世界を突き進む、「こだわりキャンパー」もまた増えている。
「川のせせらぎと風の音しか聞こえないって、最高でしょう?」
まだ肌寒い3月初旬、木を利用して張ったテントサイトの傍で火をおこしながら、日本ブッシュクラフト協会のメンバーの一人が言った。
茨城県高萩市の小山ダムに隣接する「ブッシュ&レイク in はぎビレッジ」は、市が市域の約8割を占める森林原野を活用する「アウトドアのまち」をめざす取り組みの一環だ。
ブッシュクラフトとは、必要最低限の装備で森へ入り、その場にあるものを生かして生活するテクニックのことだ。寝泊まりするのに適した場所を見つけ、持参した幕(タープ)とロープを使って、立ち木などを利用してテントを張る。金属ポールなど、通常ならキャンプの必需品となる道具はほぼ使わず、その場にある木や落ちている枝を利用する。散り敷かれた落ち葉が、ふかふかの天然のベッドになる。
自然を学ぶ場として
火をおこして暖を取り、川で釣った魚を焼き、持参した食料を温める。焚き火台も使うが、基本は直火だ。
日本ブッシュクラフト協会の相馬拓也代表理事は言う。
「現在、日本のキャンプ場はほとんどが直火禁止で、木を切るのもNGです。禁じられた理由は、利用者に技術がないから。ブッシュクラフトは確実な火の管理や消火法、木を傷めない切り方を実践する技術でもある。この場所を、そんな知識や技術を磨く場にしようと計画中です」