05年6月1日の阪神戦の6回、バティスタはカウント2-2から三塁線ギリギリにボテボテのゴロを転がした。
必死の形相で一塁に全力疾走したバティスタは、ベースを駆け抜けてもスピードを緩めることなく、そのまま右翼ポール際まで走っていった。
だが、結果はファウル。本拠地・ヤフードームでは見慣れた光景ながら、甲子園の阪神ファンには初お披露目とあって、スタンドは大爆笑の渦に包まれた。
打ち直しの打席では空振り三振に倒れたものの、“グラウンドのエンターテイナー”は「ファウルと思ったけど、ファンも喜んでくれただろ」と笑いを取れて満足そうだった。
同年は打率.263、27本塁打、90打点とまずまずの成績を残したバティスタだったが、たった1年で解雇されたのが惜しまれる。(文・久保田龍雄)
●プロフィール
久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍「プロ野球B級ニュース事件簿2021」(野球文明叢書)。