国や自治体は、マスク着用が推奨される場面や年齢、会食する人数などを緩和しつつある。夏に向けて対策はどうなるのか。尾崎治夫・東京都医師会会長に聞いた。
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■幼児のマスク着用と情緒発達
Q:新型コロナウイルスの感染者数の減少傾向を受け、政府は5月23日、2歳以上の未就学児に推奨していたマスク着用を一律に求めない、小学生以上が屋外で他人と2メートル以上の距離が保てなくても会話がなければ着用の必要はないとするなど、「基本的対処方針」を変更しました。どう評価しますか。
尾崎会長(以下、敬称略):幼児のマスクなどについての変更は評価できます。人の感情は、目だけでなく口元や頬など、顔のさまざまな部位の多様な変化に表れます。幼児期は、顔の表情に表れる変化から、相手の感情を理解できるようになっていく時期で、そんな時期に周りの人の顔が目以外すべて隠れているようでは、情緒の発達が阻害される恐れがあります。
基本的対処方針が触れていない、実施されている感染対策についても、もっと緩和できる対策もありますし、逆効果なので見直した方がいいという対策もあります。
■屋外でのマスク着用は
Q:幼児以外のマスク着用の必要性はどう考えればいいでしょうか?
尾崎:感染対策は感染源と感染経路を踏まえて考えることが大切です。主な感染源は、大声で話したりくしゃみをしたりした時に飛び散る飛沫や、より小さなエアロゾルに含まれているウイルスです。それが口や目、鼻から体内に入ることで感染する可能性が生じます。
ただし、多くの人がワクチンを打っている今、免疫の抑制された状態にある人ら一部の人を除いて、ごくわずかな量のウイルスが体内に入ってきたからといって、それで感染が成立するわけではありません。
換気のあまりよくない屋内で至近距離でマスクをはずして一定の時間おしゃべりをしたり、歌ったりすれば、飛沫やエアロゾルを相当量吸い込むことになり、感染するリスクはあがります。
一方、屋外では大気が動いているので、飛沫やエアロゾルは拡散されていきます。ですので、屋外であれば、マスクは基本的には必要ないと考えられます。もちろん、いくら屋外とはいえ、同じメンバーで長時間バーベキューをしたり、路上飲みをしたりすれば、感染するリスクはあがります。