Q:マスクも含めて、感染対策の緩和に不安を覚える人もいます。
尾崎:マスク着用の必要性についてでもお話ししたように、どんな場面で、どんな行動をしたら感染するのかを一人ひとりが考え、マスクの着用も含めた感染対策が必要かどうかを判断することが大切です。ただし、基礎疾患があるかどうかなど、一人ひとり重症化のリスクは違いますし、不安の感じ方も違います。
■マスクありなし両方いる
たとえばマスクの着用は、場面によっては、着用している人としていない人が両方いる、というような状況が今後、増えていくと思います。その際、大切だと思うのは、着用している人もしていない人も、それぞれの判断を尊重して、お互いを批判しないことです。同調圧力をなくしていく努力が必要だと思います。
不特定多数が集まる場でクラスターが起きるのは、感染している可能性のある人が、そういう場にいるからです。まずは、体調のすぐれない人は、万が一の場合を考え、他の人に感染させる可能性のある場所には行かないようにすることが求められます。
■抗原定性検査活用すべき
また、対策をマスクだけに頼るのではなく、もっと検査も使うべきです。今はまだ、検査キットの価格が高いのですが、その場で結果のわかる「抗原定性検査」がもっと安くできるようになったら、飲食店など不特定多数の人が集まる場所で検査をもっと多用したらいいと思います。検査で陰性だったら、安心してマスクをはずしておしゃべりしたり、お酒を飲んだりできます。時間制限も人数制限もいりません。
検査のできない場所では、マスクをすればいいと思います。マスクだけでなく、検査とマスクの併用にしていけば、安心していろいろな活動ができます。
厚生労働省などによる「新型コロナウイルス感染症 診断の手引き」では、抗原定性検査は無症状の人の診断には推奨しないとされています。この根拠となっている調査で調べたのはたった数十人でした。
一方、東京都医師会がもっと大規模に、5638人を対象に調べたところ、「抗原定性検査」とPCR検査の結果の一致率は陽性の場合約98%、陰性で約87%でした。自覚症状の無い人の場合でも、陽性の一致率は100%、陰性でも94.8%でした。つまり、抗原定性検査は無症状の人にも十分、使えると思います。
ただし、「体外診断用医薬品」として国が承認した検査キットでないと精度は担保されませんので、その点には注意が必要です。
自治体や国は、検査をした上でもっと動きましょう、という方針に変えたらいいと思います。
(科学ジャーナリスト・大岩ゆり)
※AERAオンライン限定記事