廣津留すみれさん(撮影/戸嶋日菜乃)
廣津留すみれさん(撮影/戸嶋日菜乃)
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米・ハーバード大学とジュリアード音楽院を卒業・修了したバイオリニストの廣津留すみれさん(28)。現在はコンサートなどの音楽活動を行いながら、日本の大学でグローバル人材を育成するための授業も受け持っている。廣津留さんの頭の中を探るべく、どんなふうに音楽や勉強とかかわってきたのかを語ってもらうAERA dot.連載。第10回は、ハーバードの卒論と、大学生活最後の一大イベント、卒業式について。

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 ハーバードで充実した4年間を過ごし、首席で卒業した廣津留さん。学生生活の集大成となる卒論では、培ってきた交渉力を生かして大学のシステムを変えてしまった。

 「ハーバードも日本の大学と同様に、決められた単位を取得すれば4年間で卒業できるシステムになっています。また、専攻は2年次で最初に選んだ後も変えられる点が特徴的で、私も実際に応用数学や社会学から音楽、グローバルヘルスへと何度も専攻を変えました。卒論は必須ではありませんが、私は提出しました。テーマは『東ヨーロッパからアメリカの音楽』について。ただ、私の卒論は少し変わっていて、通常の論文に加えて、学校のホールで行ったリサイタルをセットで評価してもらいました。ハーバードには音楽の実技の授業がないので当然といえば当然ですが、卒論で実技を評価するシステムがありませんでした。でも、私は演奏が自分の強み。卒論の要素のひとつとして演奏も入れてほしいと教授陣に交渉したところ、その方法が認められたんです。卒論に演奏の実技を入れた学生は私が初めてだったようですが、その後もこの方法を選んでいる学生がいるそうなので、あのとき頑張って交渉してよかった(笑)。途中で他学部から移ってきた私が音楽学部で良い評価をいただいたのは、ただ成績だけでなく、こうした積極性やオーケストラなどの課外活動も含めて認めてくださったのかなと思います」

■規格外のスケールで行われる卒業式

 卒論を無事クリアし、2016年5月に卒業式を迎えた廣津留さん。卒業式前の1週間は寝る間も惜しんで4年間を過ごしたハーバード生が初めて解放される、“お疲れ様会”のような期間なのだという。

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あの映画監督がゲストスピーチ