「ハーバードの卒業式は、短い時間では語り尽くせないほどスケールが壮大です。大学の卒業式は一般的には1日で終わると思いますが、ハーバードは1週間まるごと卒業ウィーク。シニアウィークと呼ばれ、学生たちは卒業前のテストとハードな4年間を乗り越えた解放感で、この1週間はとにかくエンジョイします。
期間中のイベントは学生主体の運営委員会が企画します。内容は『寮対抗スポーツ試合の日』『ドレスアップしてカクテルパーティーをする日』などさまざま。ほかにも、アクティビティーがたくさん用意されていて、遊園地に行くツアーもあれば、ボストンに本拠地があるレッドソックスの試合観戦ツアーなどもあり、みんな思い思いにハーバードでの最後のひとときを楽しみます。パーティーもヤードの中心に大きなテントを張って、プロのジャズバンドが演奏するなど卒業式にふさわしく豪華なものです」
ハーバードの卒業式は学生たちだけのものではないのも特徴。ハーバードにかかわるあらゆる人にとって、忘れられないイベントになっている。
「シニアウィークを楽しんだ後で、ようやく卒業式典が2日間行われます。1日目は学部生が対象の式典で、私は何千人も集う広場前の壇上で校歌を弦楽四重奏で演奏しました。実はハーバードに校歌があることをこのときまで知らなかったのですが……。
2日目は、ハーバード・ケネディ・スクール(公共政策大学院)、ハーバード・ロー・スクール(法科大学院)などを含む、すべての大学院と学部生が一緒に卒業式を行います。式のハイライトのひとつが、ゲストスピーカーによるスピーチです。過去のスピーカーにはナタリー・ポートマンや、マーク・ザッカーバーグ、ビル・ゲイツなどが名を連ねますが、私たちの年はスティーブン・スピルバーグでした。ものすごく感動的なスピーチでしたね。『私は映画のなかでたくさんの未来の可能性を描いたけれど、本当の未来を創るのは皆さんたち次第です』という台詞が印象的でした。
式典が終わると寮に移動して、卒業証書の授与式があり、その後も寮でパーティーがあります。卒業式はとにかくイベントづくしですから、会ったことのない同級生とも仲良くなれる場で、私自身、大学の最終週に初めて会って、今でも仲の良い友人がいます」