小林麻央さんが乳がんで亡くなって5年。日本では年間約9万人が乳がんと診断され、女性の9人に1人が罹患していることになります。そのなかには、妊娠中や産後の授乳期に乳がんを発症している人もいます。出産前後の乳がんについて、専門医を取材しました。
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千葉県鴨川市にある亀田総合病院の乳腺科では、検診、診断から治療、その後のケアまで乳腺に関する全ての診療をおこなえる「フルサービスの乳腺センター」として、多科・多職種連携による乳がん診療を実践しています。日々、多くの患者と向き合う同院乳腺科の主任部長、福間英祐医師に、出産前後に乳がんと診断された場合の対応と心構えについて質問に答えてもらいました。
――乳がんは、妊娠・出産する年齢の女性にも多くみられますか?
乳がんは40代以降の女性に多くみられますが、患者数が増え始めるのは30代からで、若い人もかからないとは限りません。つまり、妊娠・出産する世代の女性もかかる可能性がある病気なのです。ただ、数はそれほど多くはありません。年齢層では、国立がん研究センターのデータ(2018年)によると、乳がん患者さんのうち妊娠・出産世代といえる39歳以下の患者さんの割合は4%でした。
――妊娠中や産後の授乳期は、乳がんが見つかりにくいのですか?
自治体などで推奨されている乳がん検診は40歳以上が対象であり、いわゆる妊娠・出産世代の女性の多くは検診の対象にはなりません。乳がんは、セルフチェックや検診により早期発見が可能ながんといえますが、一方で、妊娠中や産後の授乳期は見つかりにくい傾向があります。
理由として、妊娠中や授乳期は、乳腺が発達して乳房が張っているため、触れてもしこりに気づきにくく、画像検査でも発見しにくくなることが挙げられます。また、授乳が始まると、母乳が詰まるなどして乳房の一部が硬くなることもあるため、しこりがあっても「母乳が詰まっているせいだろう」と思ってしまうこともあるようです。