患者さん自身に「まさか自分が乳がんになるわけがない」という思いがあること、とくに産後は育児に忙しく余裕がないことも、気づきが遅れる要因になるかもしれません。
また、医療者側もその年代の乳がん患者を診る頻度が少ないため、見落としがちな部分があったかもしれませんが、小林麻央さんの件以降、より疑ってかかるようになったと思います。
――妊娠中や産後の授乳期の人が早期発見するためにはどうすればいいですか?
乳がんには、遺伝性乳がんというタイプがあり、このがんは若い時期に発症することが多い傾向があります。母親や姉妹が乳がんや卵巣がんに、父親が膵臓がんや前立腺がんにかかったことがある場合、あるいは血縁にがんにかかった人が多い場合には、妊娠前に検査を受けてみてもいいかもしれません。
また、もともと乳腺の線維腺腫など良性の腫瘍がある人、乳房にしこりがある人などは、妊娠中にも経過観察していくことが大切です。
最も大切なことは、「乳がんは、いつ、誰でもかかる可能性がある」と意識すること。乳房にしこりがある場合や、乳頭から血液が混じった分泌物が出る場合などは検査を受けましょう。また、授乳中でも、「いつも同じ場所にしこりがある」「しこりが大きくなる」という場合は早めに相談してください。
――妊娠・出産や授乳により、がんの進行が早まることはありますか?
妊娠の継続や、出産、授乳によって乳がんの進行が早まることはありません。また、乳がんという病気そのものが、妊娠の継続や胎児に悪い影響をおよぼすことは、基本的にはないと考えられています。
――妊娠中や産後の授乳期に乳がんが見つかったら、まずどうすればいいですか?
乳がんの治療は、がんの進行度や悪性度、がん細胞の性質などにより決定します。そのため、まずは治療方針を決めるために必要な検査をおこないます。
ただし、乳がんの検査には、妊娠中にはできないものもあります。放射線を使用するマンモグラフィー検査は、腹部を鉛の板で保護した上で実施できますが、診断のために必要な場合に限ります。造影剤を使用しないCT検査は、妊娠中期以降は実施できますが、造影剤を使用する検査やMRI検査はできません。