小林:もんであげた人の自己充足にもつながる?

三浦:そう。そうやって相互にケアしあって、コンフォートを得られる場所をどうつくるか? ということですね。

河尻:このあいだ新聞記事で読んだんですけど、「なぜ、シェアハウスに住むのか?」というアンケートを取ると、子育てをシェアできるという回答が多いらしいですね。仕事に出ているあいだ、子供の面倒を見てくれる人がいるからという。その代わりに空いてる日は同居人のご飯をつくってあげたりするのかもしれない。そういうのもケアのシェアですね。

三浦:子育てをシェアする住み方は本書でも紹介しましたが、今後増えるかもしれません。子ども食堂が発展していく可能性もある。

 やはり今、日本人は多様な意味で寂しいし孤独なんですよ。さっきも話に出たように、2011~15年は、日本人の意識が孤独からつながりへ向いた時代だったけど、それから5年くらいで再び孤独を感じる人が増えたんじゃないか。

 統計的には20代、特に女性で孤独度が高いですが、年を取ると孤独度が減ります。しかしそれは結婚している人が増えるからです。だが今後は結婚しない人も離婚する人も増えるから、年を取っても孤独度はそれほど減らないと予測されます。事実、男性は既に40代、50代で未婚が多いので、孤独度が減らないのです。孤独な男性は女性よりも事件犯罪を起こしやすいので問題が見えやすいですが、女性は問題が見えにくいという別の問題があるかもしれません。

 老後の不安も含めて、「いつ孤独になってもおかしくない」というリスクは多くの人が感じていて、10年、20年たったときにその傾向はさらに強まっていくと思う。そう考えていくと、第四の消費とは究極的に「自分が孤独でなくなれる場所、悲しみや悩みを受け止めてくれる場所」をつくる行為なのかと思います。

●三浦 展(みうら・あつし)
1958年生まれ。社会デザイン研究者。1982年一橋大学社会学部卒業。株式会社パルコ入社。マーケティング情報誌『アクロス』編集室勤務。86年同誌編集長。90年三菱総合研究所入社。99年カルチャースタディーズ研究所設立。著書に『大下流国家』(光文社新書)、『都心集中の真実』(ちくま新書)など

●小林和人(こばやし・かずと)
1975年生まれ。海外と郊外で育つ。1999年に吉祥寺の古いキャバレー跡のビルで国内外の生活用品を扱う「Roundabout」を友人数名で始める。2008年、物がもたらす作用に着目した品ぞろえを展開する「OUTBOUND」を開始。建物の取り壊しに伴い、2016年にRoundaboutを代々木上原に移転。2021年には「LOST AND FOUND」(ニッコー株式会社)の商品選定を担当。著書に『あたらしい日用品』(マイナビ)、『「生活工芸」の時代』(共著、新潮社)がある

●河尻亨一(かわじり・こういち)
1974年生まれ。取材・執筆からイベント、企業コンテンツの企画制作ほか、広告とジャーナリズムをつなぐ活動を行う。カンヌライオンズを取材するなど、海外の最新動向にも詳しい。訳書に『CREATIVE SUPERPOWERS』(左右社)がある。『TIMELESS 石岡瑛子とその時代』(朝日新聞出版)で第75回毎日出版文化賞受賞(文学・芸術部門)

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