リノベーションやシェアリングエコノミーなど「所有からシェア」への消費行動の変化を、マーケティング・アナリストの三浦展さんは「第四の消費」と名付けた。6月、三浦さんは近い将来訪れる「第五の消費」を見据えて、「次の時代の日本人がどんな豊かさを求めて、どんな生活をするかを考える」ヒントとなる『永続孤独社会――分断か、つながりか?』(朝日新書)を出版した。同書刊行を前に行われたスペシャル座談会では、生活道具を扱うRoundabout/OUTBOUNDの店主・小林和人氏と、国内外の広告クリエイティブを分析してきた河尻亨一氏とともに、社会の消費活動の変遷とカルチャーの関係を中心に、来るべき「未来」を語り合った。
「【中編】「無印良品」から「ダイソー」「メルカリ」まで 00年代に起きた生活消費の変化」より続く
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■「楽しい」から「うれしい」へ
河尻:10年前、カンヌ国際クリエイティビティフェスティバルを取材していたとき、建築家のレム・コールハースの講演を聞いたら、いまは20世紀的な価値観と21世紀的な価値観が衝突している時代だと言うんです。それは「チャレンジ(挑戦)vs. コンフォート(快適)」の戦いであると。で、建築のデザインからほかの文化的事象にまで、両者のせめぎ合いが現れていることを解説する内容だったんですけど、さっきの三浦さんの部屋の話を聞いても、やっぱりそこのバトルですよね。無印とか禅的な部屋のスタイルに挑戦するのはマインドとしてギラギラしてますけど、そうではなく快適なソリューションを見いだしていく。
小林:「チャレンジvs.コンフォート」というのは、三浦さんが言う「楽しい」と「うれしい」の違いに近い何かを感じますね。見田宗介さんの「コンサマトリー(自己充足的)」と「インストゥルメンツ(道具的・手段的)」という概念を引用しながら「うれしい」はコンサマトリーだとおっしゃっていましたが、それってコンフォートに近い概念なのかなと。