「六厘舎」のスープをイメージしながら、自分の味を追求していった(筆者撮影)
「六厘舎」のスープをイメージしながら、自分の味を追求していった(筆者撮影)

「ラーメンを楽しく作れる環境が一番です。気持ちが弱気になると味に出てしまう。マインドを常にプラス側に持っていけるように保ってあげるのが私の役割なんです。うちは結束が強いですよ。それが身内経営の良さじゃないですかね」(陽子さん)

 そんな陽子さんも毎日店に出る。開業準備中に妊娠が発覚し、現在は4人の子どもを育てている。子どもをオンブして店に立つこともあった。ラーメンをただ提供するだけでなく、お客さんを笑わせてこそ「中川會」流。今では陽子さんに会いに来るお客さんもたくさんいる。

店内に置かれた「夫婦の小言」にも「中川會」らしさがあふれる(筆者撮影)
店内に置かれた「夫婦の小言」にも「中川會」らしさがあふれる(筆者撮影)

「たかはし」の高橋さんは、自分が実現できなかったことを「中川會」は実現していると話す。

「お子さんが4人もいながら夫婦二人三脚を実現しているのはすごいことだと思います。私も子どもを3人育てながら夫婦で創業しましたが、途中で二人三脚を断念。今でも家庭円満ですが、社会では別の道を歩んでいます。大変さがわかるだけに『中川會』さんの凄さは誰よりもわかっているつもりです。女将の強さを感じます」(高橋さん)

 陽子さんも、高橋さんに一目置いている。

「経営者としてとても頭のいい人だけど、泥臭さや人間臭さも持ち合わせた人です。店がうまくいかない時に相談すると、コンサルのように教えてくれます。人を育てるために時間とお金を惜しまず、それでここまで店を大きくされた。理想を現実にできる人ですね」(陽子さん)

つけ麺を食べた後の〆のカレ変ライス(190円)は欠かせない(筆者撮影)
つけ麺を食べた後の〆のカレ変ライス(190円)は欠かせない(筆者撮影)

 経営者として店を大きくする高橋さんと、夫を支えながら家族経営の店を切り盛りする陽子さん。全く違う人生の二人だが、ラーメンが繋ぐ絆とは面白いものである。(ラーメンライター・井手隊長)

○井手隊長(いでたいちょう)/大学3年生からラーメンの食べ歩きを始めて19年。当時からノートに感想を書きため、現在はブログやSNS、ネット番組で情報を発信。イベントMCやコンテストの審査員、コメンテーターとしてメディアにも出演する。AERAオンラインで「ラーメン名店クロニクル」を連載中。Twitterは@idetaicho

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