昨年、ミルボラをした俳優の石田ゆり子さんが、「ちびた」と名付けた猫を手放すにあたり、自身のインスタグラムにこう書いていた。
「たとえちびたの記憶にわたしが残らなくても 人間の手が優しくて 人の手のそばにいることを幸せだと感じてくれることが ちびたのこころの底辺にしっかりと根付くことだけを祈って。それがミルクボランティアの役目です」
うんうん、ウリ坊とペロもそうあってほしい。
11月20日、私は車で宮崎県動物愛護センターをめざした。2匹は先週、初めての譲渡会で誰にも引き取ってもらえなかった。新しい飼い主との出会いがないと、いつまでもセンターでの狭いケージ暮らしが続く。かわいい盛りを過ぎないうちに、何とかしてやりたい。
道中、交差点でのぼり旗を立てて手を振る男性を見かけた。12月25日投開票の県知事選に立候補を表明している東国原英夫氏(65)だった。目が合ったので停車し、「投票率が上がるといいですね」と伝えると、すぐに先を急いだ。知事選の行方よりも、ウリ坊とペロの運命のほうが気がかりだった。
この日も会場には50匹ほどの保護猫が集められた。グレーのロングヘアのウリ坊は異彩を放ち、「ちょっと見せて」と多くの人が関心を寄せた。一方、黒猫のペロにはなかなかお声がかからない。センター職員によると、黒猫は不人気という。ペロのいじらしいほどの人懐っこさを知っているだけに不憫に思えた。ペロは「抱かれ上手」を買われて、センター主催の子ども向け教育講座に「出演」し、児童らを大いに喜ばせてもいた。
正午すぎ。落ち着いた雰囲気の初老の男女が訪れた。男性が三毛猫を抱き、「この猫がかわいいな」。女性はウリ坊を見初め、「私はこっちのコがいい」。男性は「2匹は大変だろうけど、まあ、いいか。じゃあ、このコと、このコを」と言った。目の前にいた私は反射的にケージからペロを抱き上げ、「グレーの猫の兄弟です。ずっと一緒にいたから相性抜群です」と説いた。
男性は「そうか、じゃあ兄弟の2匹にしよう」と、ウリ坊とペロの引き取りを即断してくれた。