381系を使用する特急「やくも」。写真のように、カーブでは大きく車体を傾けて走る姿が特徴である(撮影/北村光)
381系を使用する特急「やくも」。写真のように、カーブでは大きく車体を傾けて走る姿が特徴である(撮影/北村光)

 高い位置にある運転台、クリーム色と赤色の車体色、ノーズにある逆三角形のシンボルマーク……。これらは国鉄の特急形電車に共通した意匠であったが、すでに485系も183系も昼夜兼用の583系も引退し、臨時列車すら走っていない(485系の改造車を除く)。

 しかし、現在も1列車だけ残っている。それが岡山~米子・出雲市間を伯備線経由で結ぶ特急「やくも」である。残念ながら?車体色はピンク色をベースにしたオリジナルカラーだが、車体の改造はほとんどなく、高い運転席も、逆三角形の特急マークも健在である。

 1973年に中央本線の「しなの」でデビューした381系は、カーブを高速で駆け抜けられるように、車体を傾けて遠心力を抑えられる振り子式という車体構造を、国鉄で唯一採用した車両である。阪和・紀勢線の「くろしお」でも使用され、一時は「こうのとり」にも充当されたが、いずれも引退し、現在は「やくも」だけが残されている。

 最新の振り子式車両は傾きが制御されており、「車体が傾いて車酔いする」と言われた乗り心地も「やくも」だけで味わえるものである。2022年頃から新型車に置き換えられる計画もあり、今のうちに乗っておきたい最後の本流「国鉄特急形電車」である。

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厳冬の北海道を代表する「785系」