昔から醤油が好きでいろいろな種類を買って試していたこともあり、醤油の味は頭にインプットされていた。できるだけ醤油のよさを壊さないことを意識しながらブレンドし、自分の頭の中にある味を具現化していく。はじめは3種類の醤油をブレンドした醤油ダレからスタートした。スープは「楽々」時代に見つけた鴨だ。
駅から遠いとは言え、その旨さを聞きつけ、ラーメンブロガーや評論家もすぐに来てくれた。口コミは一気に広がってお客さんはどんどん増え、当時身重だった奥さんも駆り出し、何とかお店を回していった。
「しば田」のラーメンは天然素材だけを使っている。天然であるがゆえに、素材の状態が毎度変わることが悩みだった。素材単体ではブレが出てしまう。それを最小限にするために、いくつかをブレンドするわけだ。
「あくまで醤油が主役。醤油ダレに合うか、これが全てです。スープが旨すぎてもダメなんです。醤油をきっちり立たせることだけにこだわっています」(柴田さん)
とにかく醤油に振り切り、常に新しい醤油を研究し続けている。現在は6種類をブレンドしているというから驚きだ。こうして醤油を極めに極め、「醤油ではしば田」と言われる存在にまで上り詰めた。今では売上も安定し、従業員を雇うこともできるようになった。
ラーメン界の同期、「トイ・ボックス」の山上さんは柴田さんをこう分析する。
「同じ年に独立したので、『TRYラーメン大賞』の新人部門でもライバルになります。結果は柴田君が大賞でした。とにかく醤油に対する思いが強いので、迷ったら柴田君に相談しています。シンプルなラーメンに見えますが、ああ見えて独創的でオリジナル。ブレずにどんどん進化しています。彼がいなければ自分のラーメンも5年は遅れていたと思うくらい、大事な同期です」
柴田さんも山上さんのラーメンへの深い愛には頭が上がらない。
「ラーメンに対する考え方、経営手法なども含めて描いているところが似ているし、とても尊敬しています。オンとオフを切り替えない人で、ラーメンに向き合っている時間が本当に長いんです。いろんなラーメンを食べては吸収して、広い視点で捉えている。見習うべきところが多い人です」(柴田さん)
同じ年に独立した二人。互いに切磋琢磨し、認め合いながらラーメン業界を盛り上げている姿は頼もしく見える。二人のラーメンの進化は留まる所を知らない。(ラーメンライター・井手隊長)