『ドキュメンタリーの舞台裏』大島新(文藝春秋)ピリッと個性が光る「大島印」。ドキュメンタリーは被写体ありき。「聞く」だけの映像なら作り手を意識することはないが、「大島は出たがり」と言われながらも心掛けてきたのは被写体との「会話」だという。失敗の中から学んだ大島流ドキュメンタリーの極意。
『ドキュメンタリーの舞台裏』大島新(文藝春秋)ピリッと個性が光る「大島印」。ドキュメンタリーは被写体ありき。「聞く」だけの映像なら作り手を意識することはないが、「大島は出たがり」と言われながらも心掛けてきたのは被写体との「会話」だという。失敗の中から学んだ大島流ドキュメンタリーの極意。

大:結局プラスとマイナスは裏表なんですね。最初、若干物足りないと思った。それは監督の善良さというのか。でも2回目、これは長所でもある。この善良さが持ち味なんだと思い直しました。

阿:鈴木祐司という人は東海テレビの中でもいちばん真っ正直な監督なんです。彼はいつも「中にどれだけ資料が入っているの!?」というくらい大きなバッグをパンパンにして動いているんですね。

大:ディレクターの鑑ですね。宣伝資料に、被写体の人から「バカ」と言われるという。それってある意味、勲章ですね。

阿:まったく気取りがない。ノーガードなんです。

大:そうじゃないと撮れないものがありますよね。

──最後に、おふたりにドキュメンタリーの可能性について何か。

阿:僕は、お金や数字にからめとられずにたくさんの人に観てもらう方法を模索しながら、地域のことを一生懸命に掘っていく。そのことが世界に通じる作品を生む可能性がある。そう示していけたらとやっています。

大:私は、ドキュメンタリーは、映画を観る前と後でちょっとした景色が変わる。それを今後も意識してやっていきたいですね。(構成/朝山実)

週刊朝日  2023年1月20日号