
大:どれだけ東海テレビの活躍が地方のテレビマンを勇気づけたことか。このあいだ中四国ブロックのテレビ制作者フォーラムに審査員で行ってきたんですが、若い人たちが「いつか東海テレビのように」というのを意識しているんですね。「チョコレートな人々」にしても、20年くらい前からのテレビ取材の素材がある。そこに地方局ならではの力を感じますね。
阿:そう言っていただけるとうれしいですね。
大:これはポレポレ東中野支配人の大槻(貴宏)さんが話されていたんですが、ドキュメンタリーというと原(一男)さん(「ゆきゆきて、神軍」「水俣曼荼羅」など)と森(達也)さん(「A」「FAKE」など)のイメージが大きくて、あそこまで強烈な個性がないといけないのではないかと思わせる壁があった。だから大島さんのようにリーズナブルにやる人がいたほうがいいんだと。褒められているんだか何だかわからないですが(笑)。
阿:大島さんが、これは映画にしようと思うのはどういう?
大:一つは、テレビでは企画が通らないから映画にするという現実的な問題があります。たとえば「なぜ君は総理大臣になれないのか」(20年)は、ひとりの政治家にスポットをあてた長尺のドキュメンタリーで、テレビではありえない。
阿:ヒットする予感は?
大:まったくないです。びっくりしました。
阿:やっぱり、これはいくぞと思うとかえってダメなんですかね(笑)。
大:いま思っていらっしゃる?
阿:ハハハ。とにかく「チョコレート」はたくさんの人に観てほしいんです。
大:それは同感!
──柔軟に見える阿武野だが、頑固でもあるのが作品は劇場で観てほしいという姿勢。一切DVD化もネット配信もしていない。
阿:それは不文律にしてきているんですが、大島さんはそこはバッと出されるんですよね。
大:そうですね。
阿:そうすると映画館で観るのをやめて、配信を待とうという人も出てくると思うんですが。
大:それは、しょうがないかなぁ。もちろん劇場で観てほしいんですけど。ヒットしたといっても「なぜ君」はコロナもあって3万7千人くらい。いっぽう配信では10万人を超えた感触があった。