ラジオ「錦鯉の人生五十年」の打ち合わせ風景。この日はスーツの衣装ではなく、普段着。「打ち合わせしなくても、黒Tシャツでお揃いだ」と長谷川が照れて言うと、「たまたまだから」と渡辺が冷静にツッコむ(撮影/加藤夏子)
ラジオ「錦鯉の人生五十年」の打ち合わせ風景。この日はスーツの衣装ではなく、普段着。「打ち合わせしなくても、黒Tシャツでお揃いだ」と長谷川が照れて言うと、「たまたまだから」と渡辺が冷静にツッコむ(撮影/加藤夏子)

■スキンヘッドのおじさんに 「きゃー」「カワイイー」

 今や錦鯉は、「売れ続けて快走中のおじさん」のオーラを放つ。昨年出演したテレビの番組数は、403本にも上る(22年1~11月。ニホンモニター調べ)。1年間、売れっ子として駆け抜けた感想を問うと、渡辺はこう答えた。

「まるで異世界に転生したようでした。自分たちより、周りが変わった感じ。『転生したらM-1チャンピオンになっていた件』というライトノベルの主人公のおっさんになった感じです」

 長谷川は20年末に、長年続けた夜勤バイト生活に終止符を打ち、芸人の仕事一本に絞っていた。M-1で優勝した後、6畳一間、家賃5万円の暮らしを返上。都心の高級マンションに引っ越した。2人とも、22年9月時点の月収は「1千万円超え」と番組で公言している。長谷川は「貧乏すぎて虫歯のケアができず」に、奥歯から8本の歯を失ったが、歯の治療もできるようになった。

 20年前に長谷川がレギュラー出演していたHTB北海道テレビの情報番組で共演し、今は錦鯉のレギュラー番組のチーフプロデューサーを務める戸島龍太郎(55)は、錦鯉を取り巻く聴衆の反応の変化に驚きを隠せないという。

「雅紀なんて、20年前と言ってることもやってることも、基本は変わってない。しかも今は、見た目はスキンヘッドのおじさん。なのに、子どもに人気があり、若い女性に『きゃー』『カワイイー』って声をかけられていますからねえ。雅紀の出身校でロケした時、感激のあまり、女子高生が泣いていたんですよ。すかさず隆さんが、『亡くなったおじいちゃんに似てるの?』と突っ込んで、笑いをとってました」

 何かと年齢を話題にされることは多く、彼ら自身も年齢を笑いのネタにしているが、2人とも、人が思うほど年齢を気にしていないのだという。

 長谷川は言う。

「僕らはただ、お笑いが好きでたまらなくて、やめ時がわからなくて芸人を続けてきただけ。僕なんかは、二回り年齢が違う若手とも、一緒にライブをさせてもらってきた。『鈍感力』の賜物(たまもの)です(笑)。若い人たちが、オジサンたちを腫れ物に触るような感じじゃなく、普通に付き合ってくれたのが有難(ありがた)いですね」

 錦鯉とともにM-1の決勝で戦ったモグライダーは、錦鯉が客数の少ない小劇場でのライブをこなす「地下芸人」時代から付き合いがある。ともしげ(40)は、リスペクトを込めていう。

「芸人って、20年ぐらい売れないと、『俺なんてどうせ』みたいな心の闇が出てくる。でも錦鯉は、そういうことがなかった。それはすごいこと」

 相方の芝大輔(39)は、「いるだけで愛される力」が錦鯉にはあるという。

暮らしとモノ班 for promotion
台風シーズン目前、水害・地震など天災に備えよう!仮設・簡易トイレのおすすめ14選
次のページ