一塁手のおでこに当たったボールを二塁手がキャッチ(写真提供・日刊スポーツ)
一塁手のおでこに当たったボールを二塁手がキャッチ(写真提供・日刊スポーツ)
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 8月5日から第107回全国高校野球選手権大会が開幕する。連日猛暑のなか、熱戦を繰り広げている球児たちだが、時には思わぬ珍プレーや珍事が起きることもある。過去の甲子園大会で本当にあった思わずビックリの珍エピソードを紹介する。

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 かつての中日・宇野勝の珍プレーを思い出させるような“ヘディング・プレー”が見られたのは、昨夏の1回戦、小松大谷対明豊だ。
 
 3対3の5回1死、明豊の5番打者・石田智能が一塁方向に高々と飛球を打ち上げたことが、きっかけだった。

 落下点に入った小松大谷の一塁手・胡麻結月が捕球を試みたが、ミットに触れたにもかかわらず、捕球に失敗し、ボールを自身のおでこに当ててしまう。跳ね返ったボールは宙を舞って落下しはじめたが、胡麻は行方を見失っている様子。テレビ中継の実況アナも思わず「ああ、ああ、ああ、ああ」と声を漏らし、緊迫した空気が流れた。

 だが、直後、胡麻の後方で待機していた二塁手の石浦慈人が慌てることなく、地面に落下する寸前に前傾姿勢でキャッチ。「捕りました!」とばかりに、ボールを持った右手を高々と上げてアピールする姿にスタンドから大拍手が送られたのは言うまでもない。

 守備でナイスフォローを見せた石浦は、打者としても1点を追う7回無死一塁でバント安打を記録し、次打者・田西弥の右越え2点タイムリー三塁打で逆転のホームイン。8回にも2死二塁から追加点を呼び込む右前安打を放つなど、攻守にわたる活躍で、出場3度目の同校の甲子園初勝利に貢献した。

 同年は1月1日に最大震度7の能登半島地震が起き、被災地にある能登高と合同練習を行った小松大谷ナインは「彼らの分までやる」と強い決意で甲子園に乗り込んできた。

 珍プレーを好プレーに変えたチーム一丸の勝利に、逆転打を放った田西も「勇気と元気を与えられたと思う」と感無量だった。

 スコアボードの校名表記が試合途中で変更された直後、“校名効果”とも言うべき鮮やかな逆転劇が見られたのが、1986年の1回戦、宇都宮工対桐蔭だ。

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