
死亡年齢の高齢化、葬式・墓の簡素化、家族関係の希薄化……、社会の変化とともに、死を取り巻く環境も大きく変化してきました。意識の上で「家族」の概念が変化しているのは、若い世代だけではなく、大人の多くが、自分のきょうだいが家族だという認識をしていないそうです。
この30年間、死生学の研究をしてきたシニア生活文化研究所代表理事の小谷みどりさんが、現代社会の「死」の捉え方を浮き彫りにする新刊、朝日選書『〈ひとり死〉時代の死生観』(朝日新聞出版)を発刊しました。同書から「お葬式の変化」を抜粋してお届けします。
【写真】小谷みどり氏の最新刊『〈ひとり死〉時代の死生観』はこちら
* * *
自分のきょうだいが家族だという認識をしていない
意識の上で「家族」の概念が変化しているのは、若い世代だけではない。大人の多くが、自分のきょうだいが家族だという認識をしていない。子どもの頃は家族だったはずのきょうだいが、それぞれが成人して結婚すると、家族であるという意識が薄れてしまう。
きょうだいや祖父母が家族ではないのであれば、家族の範囲は親子(と人によってはペット)に限られてしまう。しかし、多くの日本人は「困った時には家族だけが頼り」でも、「家族に迷惑をかけたくない」と思っている。少子化で子どもの数が減っているのだから、家族の人数は、必然的に減少しており、親が自立した生活ができなくなった後、子どもひとり当たりにかかる負担は大きくなっている。
65歳以上の世帯の状況では、ひとり暮らし高齢者が増加しているが、「老親と未婚の子」の住まい方も年々増えており、2023年には20%を占めている。このなかには、結婚して家を出ていった子どもは育児で大変だという理由で、老親の世話や介護の負担が、同居の未婚の子に重くのしかかっているケースも相当あるだろう。厚生労働省「雇用動向調査」によれば、「介護・看護」を理由として離職するいわゆる「介護離職」をする人は、2013年以降急増し、2017年には9万人を超えた。ここ数年は減少しているとはいえ、2022年には7・3万人もおり、介護をする家族の負担が大きいことがわかる。
