
人材もいなければ金もない
運動系の活動も同様に、指導者の確保は困難な状況にある。
ある私立高校でテニス部顧問を務めるトモコさん(仮名、50代)は、人材確保が厳しい現状をこう語る。
「これまで散々コーチ(外部指導者)を探してきましたが、なかなか見つからない。どうやったら地域に部活動の受け皿を作れるというのか」
同校のコーチの多くは卒業生で、高校が直接契約している。週2回の練習で、大学生のコーチには月2万円、大学院生の場合は月2万6000円を支払う。どうみても割のいい額面ではない。
「学校のお金だけに頼っていたら、いいコーチに到底来てもらえません」(トモコさん)
NPOを立ちあげて報酬を捻出
そんな危機感から、1年ほど前にトモコさんやコーチらはNPOを立ち上げた。練習試合ごとに参加する部員から500円を徴収し、それを原資に、練習試合を引率するコーチに1万5000円/回(交通費、昼食代込み)を報酬にプラスして支払っている。
だが、指導者が担うことになる役割は、コーチの比ではない。コーチの仕事は基本的に技術指導だけだが、顧問となるとレギュラー選手の選考や、部員のトラブル、保護者からのクレームなどに対応している。部活動を地域移行すれば、顧問の仕事もコーチの役割も、指導者が請け負うことになる。
「現状の金額では全く割に合わないでしょう。現実問題として、組織力のある民間のクラブチームが受け皿にならないと、無理だと思います」(同)
地域の部活動はうまく進んでいない
部活動の問題に詳しい名古屋大学大学院の内田良教授は、「部活動の地域移行はうまく進んでいません。多くの自治体が悲鳴をあげているのが現状です」と言う。
「これまで全国の部活動は、教員たちのタダ働きによって支えられてきた。それを地域に移行しようとしているわけですが、健全に働いてもらうためのお金もなければ、人材もいないということです」(内田教授)