部活動の地域移行が進んでいる。そのカギの一つが「部活動指導員」だ(写真はイメージ/gettyimages)
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 部活動で学校や教員にかかる負荷が重すぎる――。そんな背景から、部活を「地域の活動」に移行する動きが進みつつある。しかし、地域移行はうまく進んでいるとはいえず、部活動がなくなる怖れがあるという。

【早わかり】「部活動」は消滅する? 「地域移行」の大問題【2分で解説】

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地域移行で部活はなくなる

「地域移行されたら、たぶん演劇部は消滅するでしょう。地方にも都市部にも指導者がいないんです。演劇だけでなく、多くの部活動がなくなると思います」

 こう語るのは、首都圏の学校で演劇を教える部活動指導員のオサムさん(仮名、60代)だ。

 2022年、スポーツ庁と文化庁は地域移行の指針として、「学校部活動及び新たな地域クラブ活動の在り方等に関する総合的なガイドライン」を策定した。都道府県や市区町村には、「各地域において、専門性や資質・能力を有する指導者を確保する」ことが求められる。

 たとえば演劇部の場合、「プロの俳優がたくさんいるのだから、その人たちに指導してもらえばいい」という声があるという。

1カ月の報酬が2万円

「でも、指導者の立場で考えてみてください。生徒に行う指導だけでは、生活は絶対に成り立ちません。私の場合、3月の勤務時間は5日10時間で、報酬は約2万円でした」(オサムさん)

 オサムさんは中学校演劇部の元顧問で、教員を退職後、部活動指導員になった。地域移行後、自治体が指導者に支払う報酬は部活動指導員の報酬に準ずることが多い。オサムさんの場合、勤務時間は基本、週1~4日で、1日2時間程度。報酬は約2000円/時(交通費は別途支給)だ。

 つまり、多くの俳優にとって、部活動指導員は割の合わない仕事になる。

 指導員を務める俳優がいたとしても、本業を優先せざるを得ない。「急に芝居が決まったので、3カ月くらい来られません」という連絡がきて、部活動指導員が不在になる事態が、実際に学校現場で起きているという。

「こんなありさまで、自治体が十分な指導者を確保できるとは思えません」(同)

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