本連載の書籍化第6弾!『鴻上尚史の具体的で実行可能なほがらか人生相談』(朝日新聞出版)

【鴻上さんの答え】

 マカロンさん。大変ですね。苦しんでいるマカロンさんには申し訳ないのですが、ショックなことを言いますね。マカロンさんの母親は、「毒親」です。

 本当にすみません。でも、僕にはそうとしか思えません。

「毒親」にはいろんなタイプがいます。

 一番、イメージしやすいのは、「命令タイプ」ですね。「~しろ」という形で、厳しいしつけやルールを押しつける親ですね。

 でも、意外に多いのが「自罰タイプ」です。

 例えば、テストで低い点を取ってきた子供に対して、

「なんでこんなに低いんだ!もっと勉強しろ!今日から、スマホ没収!テレビ、マンガも絶対に許さない!睡眠と食事以外は机に向かえ!門限は18時!友達も、親が許した相手以外は口をきくこと禁止!」

 と言うのは「命令タイプ」です。

 一方、「なんでこんなに点数が低いの!?ママは悲しい。本当につらい。こんなに低い点数を取ってくる子供を持ったママは本当に死にたくなる。ママのせいよね。ママがちゃんと教えなかったからよね。ああ、死にたい(涙)」

 と、自分を責めるのが「自罰タイプ」です。

 子供にとって、やっかいなのは、「自罰タイプ」です。

「命令タイプ」は、「反抗」という手段を子供は選べます。「いい加減にして!私は私のやりたいようにするの!」と親につっかかって、自立する可能性があるのです。(もちろん、そこで「暴力」で子供の反抗を押しつければ、「毒親」レベルは上がります)

 ところが、「自罰タイプ」は、親が自分で自分を責めているので、子供は簡単には反抗できないのです。

「自分を責めるのはやめて!」と言っても、「私の責任なんだから!私が悪いんだから!」と母親に言われて、反抗になかなかならないのです。

「親が怒っている姿」は、子供を鋭利な刃物で残酷に切り裂きます。ですが、「親が泣いている姿」は、毒薬や鈍器で深く鈍く子供を傷つける、という感覚です。

 マカロンさん。「1カ月に数回、私なんていない方がいい、〇〇(私)がいなければ死んでる」と、子供の前で言うのは「毒親」です。

 こう言うことで、子供の心を実質的にコントロールしているからです。こう言うことで、子供が自分の言うことに従うと意識的にか無意識的にか分かっているからです。

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