食べ物だけでも消費税をゼロに
ニュースなどでは、フードバンクや炊き出しボランティアなどに支えられる人が増えていたり、シングルマザーが自分の食事を抜いてようやく子供に食べさせられたりするなどという悲惨な状況が拡大していると伝えられる。親が裕福でない大学生も大変で、大学が支援を始めたという話も聞く。
食料品価格の上昇は、特にエンゲル係数が高い子育て世帯、高齢者世帯、大学生や非正規労働者の世帯などの生活を直撃しているのだ。
こうした状況に対応し、手を差し伸べるのが政治の一番重要な仕事のはずだ。
そう考えると、生きていくことに欠かせない食べ物だけでも消費税をゼロにしようという提案が出ることは極めて自然だ。
生活苦に対応するには、給付金を使う手もある。急ぐ場合は、それも一案だ。しかし、食料品の税率ゼロの方が、低所得者層を支援する意図が明確に伝わりやすい。
また、二次的な話ではあるが、消費しない人には恩恵は行かないので、所得税減税のように減税分が貯蓄に回ってしまう心配がない。同じ減税でも所得税の減税に比べて景気押し上げ効果は2倍だという試算も出ている。
コロナ禍のドイツ、英国、オーストリアなどでは、消費税を時限的に減税し、後に元の税率に戻された。
英国、カナダ、オーストラリア、韓国、台湾では、そもそも最初から食料品は非課税または税率ゼロだ。低所得者層に寄り添う税制になっているのだ。
このように見てくると、消費税の食料品税率をゼロにしようというのは、決して選挙目当てのばらまきのためとは言えないという意見になるのも納得できるだろう。
しかし、いくら低所得者層に寄り添う政策だとしても、一度下げれば元に戻すのは政治的に難しい。結局永続的な減税になり、それを恒久的な財源がないまま実施するのは持続可能でない。将来的には国民負担となって跳ね返り、それは、低所得者層にも及ぶ。「無責任」「ポピュリズム」という枝野氏の批判は、こうした考えに基づくものだろう。
では、江田氏らの提案はそうした批判にはどう応えるのだろう。
この案では、財源は、外為特会で政府が保有する米国債などを売却(含み益がかなりあるので、売却しても利益が出て損失にはならない)して調達するとされている。
それとともに、「(20)21年秋の総選挙以降、社会保障等に充てる恒久財源として、担税能力に応じて応分の負担を求める法人税、所得税等改革(10数兆円/年の税収増)を公約していることを申し添えます」と書かれている。