立憲民主党の江田憲司元代表代行

江田憲司氏の案は減税の目的が明確

 もう1つは、江田憲司元代表代行が会長を務めるグループで、食料品の消費税率を時限的にゼロにする提案を出している。

 一律5%への減税は、その範囲が広く、単純で分かりやすいというメリットはある。

 しかし、私は、食料品税率ゼロの提案の方が、現在の国民の物価高にあえぐ状況に、より適切に応えるものだと考えている。そこで、今回は、食料品ゼロ税率案について詳しく見てみたい。

 まず、減税の目的が明確で、それが国民のニーズにぴったり合致している。この案は、何よりも、国民の目の前に今ある食料品の物価高ラッシュに対応するものとなっているからだ。

 食料品の値上げは数年前から続いているが、今年(2025年)4月に入っても4000品目超の食料品の値上げラッシュとなっている。

 日本の消費者物価指数(総合)は、今年1月に前年同月比4.0%の上昇となり、G7で1位となった。2月も3.7%、3月は3.6%の上昇で、日銀の物価安定目標の2%をはるかに超えている。

 とりわけ、一般庶民の財布を直撃しているのが、食料品の値上がりだ。3月の生鮮食品は前年同月比18.8%(キャベツは111.6%)、生鮮食品以外の食料も5.6%(コシヒカリを除くコメは92.5%)も上昇していた。

 エンゲル係数(家計の消費支出に占める食費の割合<%>)は上昇を続け、2024年には28.3%(2人以上の世帯)と43年ぶりの水準となった。G7でも最高だ。エンゲル係数が高いほど生活は余裕がなく、貧しい生活を強いられていることを意味する。日本の国民生活は、確実に苦しくなっているのだ。

 しかも、エンゲル係数は、所得が高い人ほど低く、逆に所得の低い人ほど高くなる。つまり、エンゲル係数が上がっている時は、一般に貧しい人の方が打撃を受けていると考えられる。

 食料品と同じく生活に欠かせない光熱・水道も8.7%の上昇だった(3月)。

 第一生命経済研究所の永濱利廣経済調査部首席エコノミストによれば、家計の可処分所得に占める食料・エネルギーの割合を、所得階層を5つに区分して見ると、年収で最上位20%の世帯が27.6%程度なのに対して、年収最下位20%の世帯では51.2%程度である。

 したがって、食料・エネルギーの価格が上昇すると、低所得者層への打撃は比率で見て高所得者層の2倍近く大きくなり、実質的な生活格差は一段と拡大する。

 高所得者層は、エンゲル係数が低く、またここ数年の株高で金融所得も増えている。一方で、「5%超の賃上げ!」などと騒がれているにもかかわらず、エンゲル係数が高い一般の労働者の賃上げは物価上昇に追いつかず、実質賃金はマイナスが続いている。

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