昨年11月、NPBの表彰式に出たソフトバンクの小久保監督(下段左端)と受賞者たち。近藤、山川、有原、いずれも他球団から移籍した選手だ

「能力の高い選手たちの成長が止まっている」

 その一方、ドラフト上位で獲得した選手たちが伸び悩んでいる。2015年以降のドラフト1位指名選手で、いま1軍の主力になったといえる選手はいない。ソフトバンクを取材する民放テレビ関係者は複雑な表情を浮かべる。

「良い素材が多いけど1軍で試合に出ないとなかなか成長しない。20年のドラフト1位だった井上朋也、2位だった笹川吉康は球界を代表する強打者になる可能性を秘めていますが、1軍でポジションがない。16年ドラフト1位の田中正義(現日本ハム)のように、他球団に移籍すれば活躍できる逸材がファームにゴロゴロいます」

 独立リーグの監督もこの意見に同調する。

「NPBの球団と対戦することがありますが、ファームの選手の能力の高さはソフトバンクがダントツです。投手なら速い球を投げる、打者なら力強いスイングができるという基礎能力が非常に高い。でもファームで過ごす時間が長くなると、成長速度が止まってしまうんですよ。ソフトバンク時代の大竹耕太郎(現阪神)はファームで格の違いを見せていましたが、1軍では余裕のない投球で力を発揮できなかった。別人のような投球になってしまったのは、技術面より精神的な部分が大きかったのではないかと思います。昨オフ、日本ハムからメジャーに挑戦していた上沢直之を獲得しましたが、この補強も長期的に見たらプラスになるかは不透明です。先発で投げる若手のチャンスが失われるわけですから」

 かつてのソフトバンクはFA補強に積極的なチームではなかった。パ・リーグ史上初の4年連続日本一に輝いたときは、柳田や甲斐(現巨人)、栗原陵矢、松田宣浩、千賀滉大(現メッツ)、石川柊太(現ロッテ)、森唯斗(現DeNA)など生え抜きがチームの中心だった。

 外部補強が決して悪いわけではないが、外部補強に頼りすぎると生え抜きの選手たちが育たない。そして今年のように、近藤が長期離脱し、オスナが8試合登板で防御率7.88と精彩を欠くような状況になると、投打がかみ合わなくなってくる。

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