
「野球が楽しくなくなっていました」
ソフトバンクから他球団に移籍して活躍する選手が多いのは皮肉な結果だろう。阪神に現役ドラフトで移籍した大竹は移籍初年にチーム最多の12勝をあげ、チームの日本一に貢献した。近藤の人的補償で日本ハムに移籍した田中正義は、チームの守護神に成長した。ソフトバンクで1軍出場がなかった水谷瞬は現役ドラフトで日本ハムに移籍した昨年、交流戦で.438の交流戦史上最高打率をあげ、交流戦MVPに輝いた。昨オフに日本ハムに現役ドラフトで移籍した吉田賢吾も、今年4月2日の古巣・ソフトバンク戦で先発起用され、右翼席にプロ初アーチを放っている。
かつてソフトバンクでプレーし、他球団に移籍した選手の言葉が興味深い。
「ソフトバンクは大人の集団という感じでした。ベンチでも張り詰めた緊張感が漂い、一つのミスも許されないような空気がありました。その空気があったからこそ常勝軍団を築けたと思いますが、若手はどうしても委縮してしまう。僕もチャンスを生かそうとしましたが、『失敗したらどうしよう』という考えが浮かんでしまって積極性を失っていた。野球が楽しくなくなっていましたね。移籍して、チームによってこんなに空気が違うのかと感じました。ミスが出ても『次のプレーで取り返そう』とベンチからポジティブな声が出る。指名してもらったソフトバンクには感謝していますが、移籍してよかったと思っています」
ソフトバンクの戦力が突出していることは間違いない。戦力が整ってくれば順位も上がってくるはずだ。だが、長期的なチーム作りを考えれば、生え抜きの選手の育成が根幹になる。小久保裕紀監督がどのようにチームを立て直すか、手腕が試されている。
(今川秀悟)