新型コロナでメンタルヘルスに悪影響
さらにストレス社会を加速させたのが、2020年からの新型コロナの流行です。
世界保健機関(WHO)によると、新型コロナが流行した最初の1年間で不安とうつ病の有病率が世界全体で25%もの増加を示したと報告されています。新型コロナの流行がもたらした環境の変化による不安やストレスなどは、特に若い世代のメンタルヘルスに悪影響を及ぼしたと指摘されています。
また、オンラインの急速な普及で、在宅勤務が一般的になりました。在宅勤務によって人間関係のストレスが減る一方で、孤立・孤独感を抱える人もいます。仕事とプライベートの境目がなくなって、休みなく働いてしまうという人もいます。海外ともオンラインでつながれて便利になった反面、時差に振り回され、夜中までオンライン会議をしている人もいるでしょう。
かくいう私も海外の学会に気軽に参加できるようになったのはよいのですが、問題は時差です。その会議のある週は1週間夕方5時から深夜1時まで会議、ということもあります。昼間は会議がないので、その時間は仕事に充ててしまいます。そうすると働く時間がとてつもなく長くなってしまいます。現地に行ったほうが、日常の仕事から離れられるので、よっぽど楽ではないかと思ってしまうこともありますが、オンラインなら時差ボケに苦しまなくて済むので、どちらが本当によいのか、試行錯誤しています。
タイムパフォーマンスが優先され、待てない人が増加した結果、そのイライラがもたらす犯罪も増加しているように感じます。すぐに結果を求め、安直にお金儲けをしようとして、犯罪に巻き込まれるといったこともあります。結果をすぐに求める癖がついてしまうと、「石の上にも三年」などというのは到底無理、ということになってしまいます。じっくり物事に取り組む胆力が失われているように感じます。

※『メンタル漢方 体にやさしい心の治し方』(朝日新聞出版)から一部抜粋