
「ネビンはヒットを打つコツを知っている」
一方の野手陣。評価が高いのが新外国人のネビンだ。変化球への対応能力が高く、広角に打球を打ち分ける。ノーアーチだったが、甘く入った球は外野の頭を超える長打を放つ。オープン戦12試合に出場して打率.351、OPS.864の好成績。打点9は全選手のトップだった。
もっとも、オープン戦は相手バッテリーが新外国人のストロングポイントを探るため、弱点を徹底して攻める公式戦とは攻め方が違うことを差し引かなければいけない。「新外国人は期待しても信用するな」と球界でよく言われているが、他球団はどう分析するか。パ・リーグ他球団のスコアラーはこう言って警戒する。
「ネビンのメジャーでのスタッツ(成績)では、粗さがあるパワーヒッターかなと思っていましたが、実際に見て印象が変わりました。センターから右のヒットゾーンに打球を飛ばすコツを知っている。阪神で活躍したマートンと重なりますね。ある程度の成績は残すと思います。セデーニョもオリックスでプレーしていたので計算できる。この2人の前に走者を出さないようにしないといけないですね」
シビアな西口監督にチームが引き締まった
近年の西武はグラウンドの外でファンを落胆させる女性トラブルが多かった。不動の4番だった山川穂高は23年に女性とのトラブルで警視庁の取り調べを受け、強制性交などの容疑で書類送検された。嫌疑不十分で不起訴になったが、球団は無期限の出場停止処分を科し、山川はそのままオフにソフトバンクへFA移籍した。昨年オフにはチームの支柱だった源田壮亮の不倫が報じられ、源田は不倫を認めて謝罪。今年3月のオープン戦では佐藤龍世が遠征先で宿舎と別のホテルで女性と外泊して寝坊。移動の飛行機に間に合わず、西口文也監督は3軍への降格を通告した。
ただ、西武を取材するスポーツ紙遊軍記者は「ある変化」を口にする。
「前監督の松井稼頭央さんは選手の兄貴分的な存在で寄り添うタイプのリーダーでしたが、チームの歯車が狂ったときになかなか修正できなかった。対照的に西口監督はシビアです。選手に声掛けはしますが、一定の距離を取り、実力で厳しく判断します。佐藤龍の3軍降格は当然と言えば当然ですが、チームがピリッと引き締まりました。今年から就任した鳥越裕介ヘッドコーチ、仁志敏久野手チーフ兼打撃コーチは他球団で2軍監督を務めた経験があり、外から見た西武の良さも足りない部分も知っている。戦略面でも得点を取る戦術の引き出しを多く持っているので、日本ハムのように攻守の精度を高めればチーム状況が上向くと思います」
西武は1979年に本拠地を埼玉・所沢に移転して以来、4年連続Bクラスに低迷したことが1度もなく、3年連続Bクラスも2度しかない。80年代から90年代にかけて黄金時代を築き、毎年のように優勝争いに絡んできた。82年から2006年まで25年連続Aクラスというプロ野球記録も持っている。
その強さの源は育成力だ。岸孝之(現楽天)、涌井秀章(現中日)、菊池雄星(現エンゼルス)、清原和博、松井稼頭央、和田一浩、中島宏之、片岡治大、秋山翔吾(現広島)、浅村栄斗(現楽天)、森友哉(現オリックス)、山川と、毎年のようにFAやポスティングシステムで主力選手が国内外の他球団に移籍しても、ファームで鍛え上げられた若手が一本立ちして大幅な戦力ダウンを回避してきた。西口新体制のもとで伝統の「育成力」を発揮し、若手が躍進すれば、下馬評を覆す可能性は高まってくる。
西武OBは「近年は野手の若返りがスムーズにいかなくなっていることが苦戦の大きな理由になっていますが、強いのが当たり前のチームだったのでプライドを持って戦ってほしいです」とハッパをかける。
開幕は本拠地・ベルーナドームで日本ハムと激突する。昨年と変わった姿を見せるためにも、大事な3連戦になる。
(今川秀吾)