
3月4日、2025年度当初予算案が、自民党、公明党、日本維新の会の賛成多数により衆議院を通過した。少数与党政権にとって今国会最大の山場を乗り越えたことで、石破茂首相は、とりあえず、ほっと胸を撫で下ろしていることだろう。
今回の衆議院通過を可能にした最大の「功労者」は日本維新の会だ。
自公政権の予算案に賛成することは、維新が自公に擦り寄ったと見られるリスクがある。今夏の参議院選挙を控えたタイミングを考えると、非常に思い切った決断だ。その背景には何があるのかと気になる人も多いと思うが、今回はその話ではなく、維新が予算案に賛成する最大の理由となった「高校無償化」がいかに問題の多い政策かを論じるとともに、財務省の影響下にある自民党が陥る教育予算増大による「赤字国債発行恐怖症」について考えてみたい。
まず、「高校無償化」についてだが、本題に入る前に、今回通過した予算案に盛り込まれた「高校授業料の無償化」とは何かを確認しておこう。
現状では、就学支援金という制度があり、高校などに通う子供がいる年収910万円未満の世帯に公立・私立を問わず年11万8800円を支給している。さらに、私立(全日制)の場合は、年収590万円未満の世帯には年39万6000円を上限として加算することになっている。23年度は全国の7割にあたる239万人が制度を活用した。
今回の自公と維新の合意では、25年度から公立・私立を問わず支給する年11万8800円の支援金に関して年収910万円未満という所得制限を外すこと、26年度からは私立の場合の上限額を45万7000円まで引き上げるとともに年収590万円未満という所得制限を撤廃することとされた。
この内容を理解した上で、「高校無償化」の意味を考えてみよう。
高校無償化については、維新のみならず、国民民主党も立憲民主党もこれを支持する立場を表明している。有識者の中にもこれを評価する人がいる。もちろん、私立高校の関係者には手放しで歓迎する人が多いようだ。
経済的理由によって私立高校を選択できなかった子供に私立進学の可能性を与えることになれば、もちろん、その子供や家庭にとって直接的に大きなメリットを与える。