石破首相(左)と握手を交わす日本維新の会の前原誠司共同代表

専門家が「無償化」を批判する理由

 また、社会全体として見ても、格差拡大が問題視される中で教育格差の解消は最大の課題の一つであるから、その意味で無償化のメリットは大きいとも思える。

 私立高校と言ってもピンからキリまでいろいろある。

 難関大学への進学率が高かったり、系列大学への推薦入学枠があったりして人気の有名校は資金的に余裕があるが、公立に比べて高い授業料がネックとなって、定員割れあるいは定員割れ寸前という私立高校もある。

 そうした下位の高校では、教育の質を上げるための投資や教員のスキル向上などに充てる資金がなかった。もし、高校無償化で、生徒が増えれば収入も増加し、そうした費用が捻出できて、私立高校の教育の質が上がる可能性はある。

 以上が、高校無償化のメリットとして挙げられることだ。

 しかし、そうしたプラスの効果があるのかどうかには大きな疑問がある。

 実は、高校進学率は、通信制を含めるとすでに98%超だ。ほとんど全員が高校に進学している。

 したがって、支援金を増やしたから進学率が上がるということはほぼない。特に、11万8800円の公立・私立共通の支援金の910万円の所得制限廃止は、ほとんど意味のない政策だ。選挙目当ての「バラマキ」と言って良いだろう。

 一方、私立の場合の支援金引き上げは、それによって低所得層の子供が私立に行けることになる可能性があり、機会均等という意味でプラスになると言えそうだ。また、590万円という比較的低い所得制限の廃止も同様の効果を持つ可能性は否定はできないが、それほど大きな効果ではないだろう。

 一方、専門家の間では、かなり否定的な意見が多く出されている。

 一番深刻な問題は、私立高校を実質無償化することにより、多くの生徒が公立ではなく私立を選ぶということだ。

 日本経済新聞によれば、24年度から実質無償化を段階的に進めている大阪府では、志願者の公立離れで、全日制府立高校145校のうち半数近い70校が定員割れになった。大阪府では、3年連続で定員割れが起きると統廃合の検討対象となるが、これまでに15校の廃校が決まり、25年の出願状況を見ると、さらに20校以上が検討対象になる可能性があるという。

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逆に授業料を高くする私立高校も?