ライブドア事件後に行われた放送法改正
実はフジテレビも一度買収されかかったことがある。元々フジテレビはニッポン放送が51パーセントの株を所有する子会社だった。2005年にライブドア社長だった堀江貴文はニッポン放送の株を時間外取引で、一気に29.6パーセントを取得し、3月末の議決権確定日までにライブドアが過半数をとる見込みになった。
この時点でフジテレビ側とライブドア側は和解の交渉をし、フジがライブドアから株を買い取り、さらにフジはライブドアに440億円を出資して業務提携をするという「手打ち」になったのである。
が、この業務提携はフジにとって形だけのもので、その翌月からフジの社会部の記者が日枝久の指示によって「僕たちライブドアのあら探しをしているんです」と関係先をまわっていたことは、2月10日号で大鹿靖明記者が明らかにしたとおり。
2006年1月16日には東京地検特捜部がライブドアに強制捜査をかけ、まさに「国策捜査」によって、堀江貴文は逮捕・起訴され「ネットと放送の融合」は夢物語となる。
さて、問題はそれからだ。
実は、現在、何人たりともフジテレビを買収することはできないのだ。単一の株主が、上場しているフジ・メディア・ホールディングスの過半数の株をとることはできない。
というのは、このライブドア事件の翌々年(2008年)の4月に放送法が改正され、放送局の買収はできなくなってしまったのだ。
これは総務大臣が認定すれば「認定放送持株会社」となり複数の放送会社を持つことができるというたてつけの改正だったが、重要なのは、この持ち株会社の株(議決権)の保有制限を3分の1以下としたことである。もともと、外国人が放送局の株を20パーセント以上持ったときには、放送免許取り消しの規制があったが、新たにできた規制は国内の他の事業体や個人が買収することも阻止するものだった。
つまりかつてライブドアがフジに仕掛け、楽天がTBSに仕掛けたような放送局の買収はできなくなってしまったのだ。
在京キー局のトップをきって、認定放送持株会社をつくったのはフジテレビだった。2008年3月には発表、10月に発足させ認定をうけた。
そしてこの3分の1以下の保有規準は「総務省令」で定められることになっている。
週刊文春は、第四弾として総務省からの天下りでフジの取締役等についた四人をとりあげているが、フジテレビにとって総務省は、かつての銀行における大蔵省と同じだ。
泣きながら「大好きな会社」「好きな会社をもっと良くするためにも」と訴えたフジの局アナがいたが、私は現在の形でフジテレビが残ることはないと思っている。