電波という有限の資源を免許でわりあてられ、買収不能の規制に守られて独占的利益をむさぼるその環境こそが、頽廃的な企業文化を生んだと考えている。それは経営陣だけでなく、組織の中間管理職まで染み込んでいる。大鹿記者によれば、日枝久の指示でライブドアをかぎまわった社会部の記者の一人はいまや報道局編集長だ。この点について私から改めてフジテレビに確認を求めたが、「取材活動の詳細に関してはお答えしておりません」と否定はしなかった。
絶対と言われた日本航空のたどった道筋も参考になる。
政官業との癒着による航空行政のなか放漫経営が続き、2010年1月に、2兆3000億円という事業会社としては戦後最大の負債を抱えて、会社更生法の適用を申請し、事実上倒産という事態になる。
日本航空は、京セラの稲盛和夫が、同年2月に会長として乗り込み、旧経営陣は一掃され、グループ全体で4万8000人いた従業員も、3分の1にあたる1万6000人が退職することになった。
現在7パーセントのフジ・メディア・ホールディングスの株をもつライジング・サン・マネジメントは、第三者委員会の設置をいち早く「物言う」株主として提案したことを各社は報道しているが、2月3日のフジ・メディアHDに対するレターにはこんな一文もある。
〈フジの社員が、取締役になることは独立性が疑われるので不可〉
堀江貴文は、「社内でなんとかなると思っている人たち」のことを「脳内お花畑」と評していたが、金融業や日本航空で社員たちが、破綻後にくぐりぬけた厳しい試練をフジの社員も味わうことになるだろう。
冒頭のダニエル・フランクリンの言葉にならえば、いまのテレビ業界は、1997年の金融業界。おおきな破綻と再編のとばぐちにいるように私には見える。
※AERA 2025年2月24日号
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