在留資格が取り消されると、住民票も抹消され、原則は学籍もなくなる。市教委の担当者によると、温井さんの訪問時は、「学籍を更新するためには入管(出入国在留管理庁)の手続き書類の確認が必要」だと考えていたという。

「メディア報道があって、文部科学省や隣接市に問い合わせたところ、われわれが必要ない書類を保護者に求めていたことを確認しました」(さいたま市教委の担当者)

 さいたま市から問い合わせのあった川口市教委によると、在留資格を失った児童・生徒について、小中学校を除籍にしたケースは「ない」という。

「川口市は外国籍のお子さんの多い自治体ですが、就学を希望する方には『国籍を問わず、学びにつなげる』というスタンスを持ち続けてきました」(川口市教委の担当者)

 子どもが住む場所が確認できないと学区を決められないので、住民票がない場合はアパートの賃貸契約書など、居住実態がわかる資料を提示してもらう。ただ、保護者が日本語をあまり理解できず、資料を見せてもらえないケースもあるという。

「日本語の会話がある程度できる人に間に入ってもらい、大家さんと連絡をとり、子どもが確実にそこに住んでいることを証明してもらうこともあります」(同)

文科省は周知の徹底を

 外国人の子どもの人権問題に取り組む河野優子弁護士は、在留資格のない子どもであっても教育を受ける権利があることに関して、次の点に言及する。

 日本が批准する「子どもの権利条約」は、すべての子どもの教育を受ける権利を明記しており、条約の解釈指針である「一般的意見(23)」は、在留資格の有無に関わらないことを明確にしている。

「教育を受ける権利の遵守に忠実であるならば、安易な除籍処分はあり得ません」(河野弁護士)

 内閣総理大臣答弁書(11年12月16日付)は、「我が国の公立の義務教育諸学校においては、在留資格の有無を問わず、就学を希望する外国人児童生徒を日本人児童生徒と同様に無償で受け入れる」としている。

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