名古屋五千万円恐喝事件、被害少年初激白 世紀末蔵出しワイド

 名古屋市の中学校を舞台とした「五千万円恐喝事件」。少年A(16)を主犯格とする少年グループ十数人が、被害者B君(16)に対し、総額五千四百万円もの恐喝をしていた。事件発覚から十カ月がたち、これまで沈黙してきたB君が、本誌に初めて胸中を明かした。
 

 B君はTシャツにトレーニングパンツ姿で、雑種の飼い犬タローと現れた。

 「これまで、僕を恐喝した五、六人から謝罪の手紙が届いた。全部読んでます。Aからも手紙が来たけど、全然、反省の色が見られない。便箋一枚だけの簡単なものだった」

 AとB君は、ともに名古屋市緑区にある市立扇台中学に通っていた。Aらのグループは昨年六月から今年二月まで、B君に対してすさまじい暴行を繰り返し、恐喝回数は計約百三十回に及んだ。

 「いちばん悪いのはA。あいつがいろんなやつを使って暴力を振るわせた。角材や工事用のポールで、殴られたり蹴られたりした」

 用水に突き落とされそうになったこともあった。怯えたB君と母親は、亡くなった父親の生命保険金三千万円を取り崩し、言われるままに支払った。B君のニックネームはグッチ。恐喝グループからは「グッチ金融」などとからかわれた。「顔を殴られて鼻の骨を折ったときと、袋だたきに遭って肋骨が折れたときの二回、入院しました。肋骨が折れたときは、痛くて起き上がれなかった」

 B君はそう言って胸のあたりを押さえてみせた。

 中学を卒業した今春、B君は名古屋市内の料理専門学校に入学した。

 「専門学校は、教室で包丁も握らないうちにやめちゃった。入学して三週間だったかな。料理は好きだけど、授業はつまんなかった。今、プータローだし、カネもない。これからどうするかはまだ全然決めてない」

 自宅には、中学時代の友人たちが頻繁に訪ねてくる。友人と話したり、携帯電話でのメール交換が楽しみ。深田恭子のファンだという。「僕の部屋にはフカキョンのポスターが張ってある。写真入りのカレンダーもあるけど、もったいなくて使えません」

 Aに対する現在の心境を改めて聞くと、B君は言葉少なに語った。

 「特にない。カネ返せ」

 この事件では、十数人の加害少年が逮捕、送検された。加害少年らは脅し取ったカネをパチンコ、ファッションヘルス、高級ブランド品、タクシー代などに湯水のように使った。

 今年六月、主犯格のAに対し、名古屋家裁が中等少年院送致の処分を下した。Aの母親はこう話す。

 「あの子は少年院で、十キロ近くやせました。月一度しか面会できない決まりなので、寂しいですが仕方ありません」

 母親が面会したとき、Aは「建築関係の勉強がしたい」と言いだし、少年院で通信教育を始めた。B君あての謝罪の手紙について、Aの母親はこう話した。  「『グッチ、ひどいことしてごめんね』と、仲間への呼びかけ調で、短かった。あの子は文章がへただから、反省の気持ちが伝わるようにうまく書けないんです」

 B君の母親は、約十人の加害少年らに対し、総額一億円の損害賠償を請求している。

 「うちへの請求は、あの子が自供した金額千五百三十万円の三倍くらいの額がきています。B君の弁護士からは『家を売って弁償しなさい』と言われました」

 と、Aの母親は涙を浮かべて言った。

 「お金は支払うつもりでいます。頭金は用意しましたが、あとはローンにしてもらうしかない。いっそ死んで生命保険で払おうか、と主人と相談したこともあります。でも、B君の親も、なぜこんなにお金を息子に渡したのか。学校もB君の親も何も教えてくれなかったから、あの子がこんな深みにはまっていたとは知りませんでした」

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