堺屋太一経済企画庁長官辞任にもう一つの理由 世紀末蔵出しワイド
小渕恵三前首相に「三顧の礼」をもって経済企画庁長官に迎えられた堺屋太一さんが辞任した。
“表向き”の理由は今週号の連載エッセー(44ページ)でご自身がしたためられているので、そちらをご覧いただくとして、実は堺屋さんが一部外国人記者団にだけそっと漏らした“もうひとつの理由”を、本誌はつかんでしまったのだ。
それは、組閣前日の十二月四日の午後だった。
東京・日比谷のフォーリン・プレスセンターで、その朝発表されたGDPに関するブリーフィングが行われた後、前長官が複数の外国人記者に囲まれた。質問が一通り終わったところで、ある外国人記者が、
「堺屋さん、ホントはなんで辞めるんですか?」
と切り出した。
堺屋さんの答えは、
「いや、実はね。痔が悪くてねぇ……」
思いもよらぬ回答に、堺屋さんお付きの関係者たちは絶句……。その場にいた海外メディア所属の日本人記者の一人はこう語る。
「そしたら、その外国人記者、『“ヂ”ってナンですか?』って、あっけらかんと聞き直したんだ」
困ったことに、その場にいた日本人たちは「痔」の英訳がすぐに思い浮かばなかった。バイリンガルの日本人記者も、詳しく説明するわけにいかず、言葉を詰まらせた。すると、当の堺屋さんがユーモアたっぷりに助け舟を出す。「あのね、ココ、ココの病気……」と、腰をヒョイと上げて、お尻に手を当ててみせたのだ。
それでも、くだんの外国人記者は、「はぁ……?」と、わからない様子。親切な堺屋さんは、
「うーん、なんて言ったらいいのかな。ええ……」
と、ペンを取り出し、テーブルの上にあった紙で図解しようとしたという。
あわてた日本人記者が横から、「長官、わかりました。もう大丈夫ですから……」と、止めに入った。
「そーぉ?」
と、堺屋さんはペンを収めながら、その日本人記者にこう言ったという。「いや、座り仕事はもうコリゴリ。どんどん悪くなっちゃってね」
もっとも、このやりとりをご本人に確認すると、「いや、ペンを取り出したのは、『痔』という文字を書いて通訳に見せるためだったんですよ。あれで通じたと思ったけどな」
と笑っていた。