巨人の入団会見でユニフォームを着る岩隈。左は当時の原辰徳監督(2018年12月)

「岩隈さんに救われた投手は多い」

 巨人在籍2年間で1軍登板なし。この結果だけを見れば、岩隈を獲得したことが成功したとは言えない。だが、現場の評価は違う。岩隈はファームで過ごす期間が長かったが、若手に助言を求められれば気づいたことなどを熱心に伝えていた。当時20代で、巨人でプレーしていた投手が、こう証言する。

「岩隈さんは自分のトレーニングをしながらも、若手の動きもすごく細かく見てくれるんです。投球フォームで自分が気付かなかった点を教えてくれて何度も助けてもらいました。技術的なことだけでなく、試合で結果が出なかった時には『ここをこうしたほうがいいかも』って言ってくれた。押し付けるわけではなく、『こう思うけどどうかな?』という伝え方なのでスッと頭に入る。コーチに言いにくいことも岩隈さんに相談していました。僕だけでなく、岩隈さんに救われた投手は多いですよ」

「田中も変わる必要がある」

 新天地でベテランに求められる役割は多岐にわたる。もちろん、グラウンドで結果を示すことも重要だが、練習態度や野球に向き合う姿勢も若手に大きな影響を与える。楽天を取材していたテレビ関係者は、「田中にとって巨人移籍は野球人生の大きな転機です。彼も変わる必要があると思います」と指摘する。

「楽天で田中は新人選手たちと食事会を開くなど、チームのことを考えて色々行動してくれていた。巨人に移籍すれば、功労者として首脳陣に配慮してもらった楽天時代とは扱いが変わってくるでしょう。先発ローテーションを確約されている立場でなく、若手の投手が台頭すればファームで待機する期間が長くなることも考えられる。その時にどう立ち振る舞うか。理不尽だと腐っていたらチームに悪影響を及ぼしてしまう。一回り以上年齢が離れた他の投手と積極的にコミュニケーションを取るなど、接しやすい姿勢を作ることも大事になると思います」

 今年4年ぶりのリーグVを飾った巨人で、先発ローテーションに入るのは容易ではない。先発陣は戸郷翔征、山崎伊織、グリフィン、井上温大が確定的。残りの枠を赤星優志、横川凱、堀田賢慎、西舘勇陽、又木鉄平ら若手成長株が競っている。先発陣で助っ人外国人を補強すればさらに競争が激化する。

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スポーツ紙デスクが語る「巨人の田中獲得の意味合い」は