「また、ユウイチと自分が一緒に食事をしている様子を見た周囲の人々に、『あいつ、外国人にたかってやがる』と思われるのも、極めて不本意である」
「さらには、ユウイチは他の外国人のようにお金をたくさん持っているわけではなく、トーゴにいても質素な日々を過ごしている。日本に戻れば大変な暮らしが待っているユウイチに、金を出させるのは、友人として耐えがたい」
一度にすべてを話したわけではないが、これまでに彼が私に話してくれた心の内を列挙すると、こういうこととなる。よって、カムランは私がどれだけ誘っても、地元の安い食堂であっても、外食につきあってくれたことは一度もない。割り勘でいいから、トーゴのおいしいフフを、一緒に食べたいのだけれど……。
日本に長く暮らす、西アフリカのとある国の友人がいる。彼と知りあってから6年。ビールを飲みながら、互いに冗談や本音をぶつけあうひとときは、本当に楽しい。
飲み終えた後の勘定は、いつも彼がもってくれる。今日は私が、と切り出しても、やんわりと断られてしまう。せめて割り勘でと申し出ると、「アフリカに割り勘はありましたか(なかったでしょ)?」と言って、彼は笑う。
定職につき、家族を養っている彼には、安定した収入がある。私の懐がいつも寒いことも、彼はきっとわかっている。だけど、いつもごちそうになってしまっていて、いいものなのだろうか。
この原稿を書き終えたのは、七夕の当日のこと。
「アフリカには、割り勘はないんですよ」と、日本でもさらりと飲み代を払える物書きになれますように。
岩崎有一(いわさき・ゆういち)
1972年生まれ。大学在学中に、フランスから南アフリカまで陸路縦断の旅をした際、アフリカの多様さと懐の深さに感銘を受ける。卒業後、会社員を経てフリーランスに。2005年より武蔵大学社会学部メディア社会学科非常勤講師。ニュースサイトdot.(ドット)にて「築地市場の目利きたち」を連載中