2019年に東口に、グランドシネマサンシャイン池袋、2020年にTOHOシネマズ池袋がオープンすると、映画を見る人の流れが池袋でも東口にかわってしまう。
そうしたなか、老朽化した「ロサ会館」で営業する「シネマ・ロサ」がとった戦略が「自主制作映画」だったのである。
「もともと、2000年代の前半に、当時のスタッフが、ビデオで撮影した映画を上映できる機材を買っていたことで、自主制作映画は、2003年からかけていたんです。最初は知り合いの紹介でかける作品が持ち込まれていました。それを、通年で、毎週かならず一本は自主制作映画をかけてみようとなったのは、2018年からです」(矢川支配人)
「インディーズフィルム・ショウ」というレーベルをつくってツイッターのアカウントも開設し、積極的にPRを始めた。その最初の年に『カメラを止めるな!』の大ヒットが出たのだった。
これは、新宿のK's cinemaと池袋シネマ・ロサの単館系が二館で始めた映画だ。
K's cinemaは昼上映をし、シネマ・ロサは夜上映をした。もともとはK's cinemaの企画だったが、シネマ・ロサは時間帯を変えることで、上映をすることにしたのだった。これが評判を呼び、一カ月後には、大手配給会社のアスミック・エースが配給を決め、全国300館以上で公開され、予算300万円でつくった映画の興行収入が30億円を超えるということになった。
大手は「シネマ・ロサ」の自主制作映画を狙う
もちろん『カメラを止めるな!』のような話はそうそうあるわけではない。その後もシネマ・ロサは、必ず一本は自主制作映画を一日の上映ラインアップにいれたが、ほとんどの作品は一週間の興行だ。ちょっと面白いなと思うもので二週間。この映画の編成は、一人の元社員が業務委託でやっている。
その業務委託氏が、「これはばけるかもしれない」と異例の四週間興行を決めたのが『侍タイムスリッパー』だったのだ。
安田監督は、それまでいくつかの作品を撮って、シネコンに売り込んでかけてもらったこともあったが、時間帯は深夜0時近くに一回といった感じで、これは自己満足にすぎないのではないかと悩んでいた。