本連載の書籍化第5弾!『鴻上尚史のおっとどっこいほがらか人生相談』(朝日新聞出版)

【鴻上さんの答え】

 あーつんさん。苦労しましたね。本当に大変でしたね。「母から中レベルの虐待を受けて育ちました」と書かれていますが、とんでもない。最悪のレベルですね。決して中レベルなんかじゃないですね。

 この「ほがらか人生相談」には、「毒親問題」が、毎月、必ず送られてきます。今まで、何回も答えました。

 今回、また、「毒親問題」を取り上げるのは、あーつんさんの母親の発言が、ひとつの典型だと思われるからです。

 いまだに、毒親問題を語ろうとすると、「子供を愛さない親はいない」とか「親は子供のためを思っていたんだ」「しつけの一環だったんだ」と、毒親を弁護しようとする流れが一部にあります。

 子供は「社会」ではなく、「家庭」で育てるべきだと決めつけている人達です。

 温かい「家庭」で育てられれば、それは素敵なことですが、そうならないことはあります。そういう時に、いつまでも、「家庭」にしがみついて、親の弁護をしていてもしょうがないと思うのです。

 あーつんさん。苦しかったでしょう。あーつんさんは、母親を愛したかったんですよね。子供として、母親に抱きしめられて、可愛がってもらいたかったんですよね。

 自分がうんと母親を愛したり、理解したら、母親は歩み寄ってくれるんじゃないかと思ったんですよね。

 でも、母親は、ただ虐待したいために虐待したのですね。そこに、特別な理由はなかったんですよね。いえ、母親なりには理由があったかもしれませんが、それは、子供とは何の関係もないことですよね。子供が、忖度したり、心配することではないですよね。

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