自分に虐待をしていた母を理解しようと歩み寄るものの、罵声を浴びせられる日々を送る36歳女性。自身の努力は無駄だったと、虚無感に苛まれているという。そんな女性に、鴻上尚史が指摘した「重要な気づき」とは。
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【相談237】
私を虐待していた母を理解しようと5 年間努力を続けていますが、母からの罵声がやまず、むなしいです。父も母の味方をしています(36歳 女性 あーつん)
鴻上さん、こんにちは。いつも深い考察のアドバイスに感嘆しています。
私の相談は母親問題です。私は母から中レベルの虐待を受けて育ちました。毎日、命の危険があるほどではないものの、心の傷は深く、2 年近くカウンセリングに通っています。しかし、母が虐待をしたのには何か理由があると思い、母を理解するために時間を費やしてきました。また、自分のためにも、私の子どものためにも、虐待による心のケアや内観を続けてきました。
しかしながら、先日母と電話で話した際、虐待の理由を聞いたら「大っ嫌いだった! 産まなければよかった!ここまで言えば満足か!」「もう一生会うつもりはない。孫も連れて来ないで。」「そうやって人のせいにして生きていったらいい!」など、感情的に言葉を荒げるのみ。私を嫌いになった理由は、「本ばかり読んでておかしい子だと思っていた」「幼稚園の頃、遊んだ内容や出来事を言わないのでママ友から聞いていたが、それが情けなく恥ずかしかった!その頃からアンタが嫌いになった!」とのことです。他に虐待の要因があるのでは?と問うても「ない! アンタが嫌いだった!」の一点張りです。幼稚園児に責任をなすりつけるような発言や、「本をたくさん読んで偉い」と褒められてきた経緯があるため矛盾を感じ、「あぁ、この人の発言や、虐待にすら意味はなく、ただ感情のままに子育てをしてきたのだ」と腑に落ちました。
しかしながら、幼少期から母の虐待に苦しみ、大人になってからは母を理解しようと5 年間、自分なりに費やしてきましたが、そのすべての時間が無意味だったように思えて悲しいのです。何のために虐待すら自分が悪いからだと苦しんできたのか、何のためにこんなに理解しようと時間を費やしてきたのか、虚しくて悲しいのです。
虐待の内容や母親の発言内容よりも、この虚しさが苦しいです。どうすれば私の心は悲しみや虚しさがなくなるのでしょうか?(ちなみに父は虐待当時は我関せず、今は母の味方で「なぜ過去のことを水に流せないんだ」と言っています