文化系インターンシップで感じた「しっくりこなかった」理由について、三宅さんはこう振り返る。
「私は価値基準がはっきりしているタイプ。例えばコピーライターのインターンで、企業の人が選ぶコピーに対して、あんまり良いと思えない、みたいなことが多くて。入社するということは、その会社の価値基準をある程度は受け入れること。そう考えると、結果が数字で出るITのほうが、自由に働けると感じました」
リクルートでは、就職希望者と企業とのマッチング業務を担当。東京で会社員として働きつつ、副業として書評の仕事も続けていた。
「1年目は仕事を覚えるのに精一杯。仕事自体はやりがいも感じていたので、本業も副業も頑張っていたら、睡眠時間がとれなくて。2年目にコロナ禍でリモートワークになって、少し余裕ができました。ようやく本を読んだり、副業で物を書いたりができるようになったことで、発信できること、自分の価値基準を伝えられることの意義を感じました。そういう意味では、副業と本業、どっちがやりたいことなのかを考える期間になりました」
読むこと、書くことへの思いがふくらみ、3年半でリクルートを退職。筆一本で生きる道を選び、京都へ戻った。
「京都にいるほうが、本が読めるし書けるんです。東京では人と会う機会が多くて疲れたり、飲み会が続いて執筆モードになれなかったりしたので、自分のキャパシティー的に京都がちょうどいいんです」
全身全霊でなく半身でいこう
仕事が忙しく、あれほど好きだった読書が思うようにできない。この経験から生まれたのが、労働と読書の関係をひもといた『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』だ。同書では、インターネットなどですぐに得られる「情報」に対して、読書によって得られる「知識」にはノイズ(偶然性)が含まれるとする。三宅さんはノイズを受け入れられる働き方として、全身全霊で取り組むのではなく「半身で働く」ことを提案している。